うぐいすやかすかに乾く仏の間
霧吸うて来し唇を汝に与ふ
絨毯の一角獣を蹂躙す
大寒や松の幹より砂こぼれ
冬深み赤子の耳を咬んでみる
向うから自転車が来る天の川
まんじゆさげ狐にきつね逢ひにゆく
一句目と四句目の伝統的手法。二句目、三句目の直截的な情念吐露。七句目の幻想的世界と振幅のある作家である。それらの手法の融合が五句目の「冬深み赤子の耳を咬んでみる」に到ったようにおもえる。
うぐいすやかすかに乾く仏の間
霧吸うて来し唇を汝に与ふ
絨毯の一角獣を蹂躙す
大寒や松の幹より砂こぼれ
冬深み赤子の耳を咬んでみる
向うから自転車が来る天の川
まんじゆさげ狐にきつね逢ひにゆく
一句目と四句目の伝統的手法。二句目、三句目の直截的な情念吐露。七句目の幻想的世界と振幅のある作家である。それらの手法の融合が五句目の「冬深み赤子の耳を咬んでみる」に到ったようにおもえる。
現代俳句の窓 筆者 石倉夏生
鐘楼の匂ひはいつも沈丁花 「俳壇」6月号より
岩淵喜代子
断定に説得力がある。何回も訪ねたことのある鐘楼で、いつも早春の沈丁花が咲いていたのであろうが、作者はそういは言っていない。香気を放つ主体は鐘楼なのである。そうなると季節感は借景であり、この鐘楼は季節を問わず宗教的な芳香を漂わせているとも読めう。
名刹の鐘撞き堂の風格そのものが放つ香氣と、近くから流れてくる沈丁の香りは一体であり、荘厳な気配を示す。
恵贈句集抄 筆者 北川かをり
『白雁』 岩淵喜代子
昭和11年、東京生れ、埼玉県在住。
「鹿火屋」原裕に師事。後に川﨑展宏主宰の「貂」の創刊に参加。同人誌「ににん」創刊代表。帯文に清水哲男氏は「等身大の人生から、ユーモアの歩幅とペーソスの歩速で抜け出してはまた、地上の船に還ってくる」と書く。
句集作りは、自分の抜け出す手段、「憧れ」を追う旅とする第五句集。
万の鳥帰り一羽の白雁も
幻をかたちにすれば白魚に
花ミモザ地上の船は錆こぼす
今生の蛍は声を持たざりし
登山靴命二つのごと置かれ
鳥は鳥同志で群るる白夜かな
月光の届かぬ部屋に寝まるなり
葉牡丹として大阪を記憶せり
狼の闇の見えくる書庫の冷え
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