金子 敦句集『音符』 2017年 ふらんす堂より。
盆踊りの踊り手として踊り尽くしたあとの手足の疲れを言いとめている。まだ気分の中では踊りの音楽に合わせて手足が浮遊しているのであろう。それを、「手足がただよへる」とする措辞にしたのは上手い。他に、(本ひらくやうに牡丹の崩れけり)(冴ゆる風まとひて星を売りに来る)(白餡の匂ひのしたる桃の花)など。
金子 敦句集『音符』 2017年 ふらんす堂より。
盆踊りの踊り手として踊り尽くしたあとの手足の疲れを言いとめている。まだ気分の中では踊りの音楽に合わせて手足が浮遊しているのであろう。それを、「手足がただよへる」とする措辞にしたのは上手い。他に、(本ひらくやうに牡丹の崩れけり)(冴ゆる風まとひて星を売りに来る)(白餡の匂ひのしたる桃の花)など。
青木青三郎句集『青』2017年 現代俳句協会より。
日焼け子の骨格を想像しながら、その骨格に肉がついている、とは本来の叙述とは反対の方向からせめている観方である。それが新鮮に聞こええ、日焼け子のますます筋肉質な肢体を感じさせる。他に(おぼろからおぼろ楽屋の非常口)(昭和へは歩いて帰る花みかん)など。
曼殊沙華の地上から噴き出たような茎の立ち上がりの印象がことばに置き換えられたんの。言われてみれば、あの赤さは慟哭のそれだ。比喩ではあるが、ときにわれわれは、おもいっきり大声を張り上げて、泣いてみたり、怒ってみたいものである。
註現代俳句シリーズ12期19・句集『川口 襄集』2017年 俳人協会
花野ゆく師とともがらと浮雲と
蒼空を砕氷船の戻り来る
「船団」に連載していた鷹女の評伝が上梓された。
第一章、二章は鷹女の生い立ち、俳句遍歴について語っていたが、三章からは句集の一冊ずつを紐解きながら、俳句を辿り、鷹女の背景、鷹女の俳句への取り組み方が語られている。
三章は第一句集『向日葵』を読み解くもの。ここで、鷹女の有名な句、(夏痩せて嫌いなものは嫌いなり)を取り上げながら、鷹女がやりたかったのは自我の主張より従来の俳句表現を破る文体の模索をしていたと洞察している。
さらに『白骨』では、俳人なら誰でも関わる句会の情景を背景におき、『羊歯地獄』では、鷹女が何を表現したかったのかを探っている。句集の作品鑑賞とともにかたる鷹女の背景は三章目から俄かに濃密になる。
そうして『橅(ぶな)』へと続くのだが、新しく参加した同人誌「羊歯」も脱会して、句会も持たない環境の中の句作りの経緯を読みながら、そうした環境の変化も句集ごとの作風の変化に繋がったのかもしれないと思わせる。
この『鷹女への旅』の著者三宅やよいさんは、自己を主張することなく、淡々とさまざまな情報を拾い集めて、作品を様々な角度から紹介している。そうして、それまでの句以上に表現に拘っている鷹女を見極めようとしている。
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