‘受贈著書’ カテゴリーのアーカイブ

たてよこに桂信子がいて夏野    松田ひろむ

2017年4月25日 火曜日

松田ひろむ句集『一日十句』 2017年  第三書館より

説明し難い内容だ。これが、縦横にいるのが烏や友人というなら少しは映像がつくれるのだが、ひとりが、縦横にいるとなると混乱してしまいそうだ。しかし、夏野にたくさんの桂信子が整列でもしている図は、それはそれで何んだかおもしろいではないか。

桂信子はきっと松田氏の憧憬の俳人なのだろう。その思いを映像的にすると、何処にでも桂信子が立っているのである。ほかに鑑賞したい句に以下のような句がある。(空蝉のこわれやすくてこわれゆく)(雪起し墓のなかにも白き壺)

追憶といふ麦秋の匂ひかな   武藤紀子

2017年3月31日 金曜日

「武藤紀子句集『冬干潟』 2017年  角川書店」より

森羅万象の中の揺れに身を任せているような、緩やかな詠みぶりが心地いい。ほかに(虫聴くや手足大きな西行が)(綿虫をしづかな鳥と思ひけり)(木枯に匂ひありとせば松の)(ゆうぐれに目を瞠けば花あふち)など。

蛍かと囁く蛍ねと応ふ    櫛部天思

2017年3月31日 金曜日

(櫛部天思句集『天心』 2016年  角川書店)
虚子に(初蝶来何色と問ふ黄と答う)というのがある。虚子は黄色で初春を印象付けているが、櫛部氏は囁くという措辞にによって、蛍の本位へ近づかせようとしている。

蛍の夜の景が髣髴としてくるのが、感じられた。

亀鳴いて真昼の星を浴びにけり   清水怜

2017年3月31日 金曜日

「清水怜句集『星狩』 2017年刊 本阿弥書店」より
一句はまさに虚実皮膜の詠みぶりである。なかなか昼の星を詠んだ俳人はいないのではないだろうか。私の知る限りでは、(爛々と昼の星見え菌生え)の 高浜虚子しか知らない。

2017年受贈著

2017年3月9日 木曜日

2017年受贈書籍

小川軽舟・『俳句と暮らす』          2016年     中公新書
島田牙城・『俳句の背骨』           2017年     邑書林
大崎紀夫・『nの方舟』ーー大人の童話     2017年     ウエップ
小島良子・『続・自習室』--現代の俳句を詠む 2017年       文学の森
小川軽舟著『俳句と暮らす』               2017年      中公新書
井上弘美著 『季語になった「京都千年の歳時」』2017年      角川書店

義仲寺の前通りゆく蜆売  浅井陽子

2017年2月27日 月曜日

「自註現代俳句シリーズ・12期11  『浅井陽子集』より   2017年  俳人協会」より

滋賀県大津にある義仲寺といえば、木曽義仲の葬られている寺である。そのうえ芭蕉の墓もある。そう聞くと立派な寺を想像してしまうが、まことに小さな墓所である。

蜆売りの声がまともに寺社を筒抜けに通り過ぎていくのが想像される。ほかに(卒業歌聞こゆる島の港かな)(サングラス外して鳥を見失ふ)(新涼の机に貝の砂こぼす)など、風土の匂いのする一集である。

まるまるとゆさゆさとゐて毛虫かな  ふけとしこ

2017年2月27日 月曜日

ふけとしこ著「俳句とエッセイ『ヨットと横顔』」2017年  創風社出版より

植物に詳しいというより植物や小さな生き物に、ことに興味を持っている俳人として印象を持っている。(まるまると)に続く(ゆさゆさと)で、毛虫と等身大になった作者が見えてくる。

ふけとしこ氏は「ほたる通信」というはがきの通信紙を発行して、俳句とエッセイを発表している。ここには、必ず手に取って、必ず読んでしまうという仕掛けがある。ほかに、(言い忘れすことばのやうに幹の花)(霜解けの始まつてゐる朝ごはんおとうとをタマト畑に忘れきし)(遠く見るものにヨットと横顔と)などの作品がある。

コンビニの離陸しそうな花月夜    中村光声

2017年1月2日 月曜日

「中村光声第一句集『聲』 2016年  ふらんす堂」より

「コンビニが離陸しそう」の措辞にわけもなく納得し同感してしまった。他に「秋蝶の触れたるものに触れにけり」など。句集全体では抒情的な作り手だと思うのだが、素材の新鮮さが魅力を引き出している。

あめんぼう大きく四角張つてをり   草深昌子

2016年12月24日 土曜日

(草深昌子第三句集 『金剛』 2016年 ふらんす堂)より

ほかに( 七夕の傘を真つ赤にひらきけり)(一束は七八本の苧殻かな)(初蝶の如雨露を越えて来たりけり)(豆飯に豆の潰れてあるが好き)(蝌蚪の来て蝌蚪の隙間を埋めにけり)など、枚挙に遑が無い。

掲出句、大きな足を四方に踏ん張っている姿は、生き物への愛おしみの視点が働いている。(四角張って)という捉え方とは裏腹に、あめんぼうは華奢な生き物である。

去年今年夢の中にも鳥居かな   松尾隆信

2016年12月24日 土曜日

(松尾隆信 句集『弾み玉』  2016年  角川書店)より

これから初詣に行こうとしている時間なのか、あるいはもう済ませてきたのか。そうして、転寝の間にか、あるいは元日の朝の目覚めの後なのか。どちらにしても印象に残っているのが鳥居というのも可笑しい。

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