ににん創刊十周年を機に「火と灯」を兼題にして、ににんの旅も火や灯を追いかける旅が始まった。 もともと、火と灯を追う旅は創刊初期から浮上していたのである。当時は、やがてくる創刊五周年の記念号企画にするつもりだった。
火と灯に関わる歳時記になれば、身近に置いて何度も紐解く機会があるだろうと思った。千葉の海の日に行われる行事を何と言ったのだったか。誰がそんな行事を見つけてきたのか、今になると曖昧になってしまった。北海道のイヨマンテにも出かけた。十二月の北海道はどこもかしこも真っ白だった。ことに、その熊祭り行事の会場は山間の広場で、雪の起伏があるばかりだった。
海の日や火を持つ海女の勢揃ひ 岩淵喜代子
星を打つ矢を何本も熊祭
その現場に立てば、確かに作品が得られるものであることを実感した。この二句は角川俳句大歳時記に採用されている。
その後も、埼玉の北川﨑の虫追い、山焼きや野焼き、大磯のどんど焼き、牡丹焚火、などなど数えきれない吟行をしてきた。そのうちに、不思議な火や灯にも触手を延ばしはじめた。例えば不知火、夜光虫、蛍烏賊、螢、蜃気楼、ブロッケンなど、きりもなく追いかけたいものが出てきた。その「火と灯」の作品は、別ブログで全員の作品を保存してある。
そんなわけで、いまだに歳時記は出来上がらない。結局創刊五周年のときには会員全員が「同人誌」というテーマで、文章を寄せて貰った。十周年のときには、小説をテーマにした作品のアンソロジーとなった。
十五周年は、自分の代表句と呼応する詩を探し出してきて、「詩と俳句と」というテーマで作品を揃えた。数年すれば二十周年になるが、「火と灯」の歳時記は出来上がりそうにもない。三年ちかく続いた「火と灯」の兼題を一度中止すことにした。
あまり長く続くのも、だれてしまうものである。兼題も、もとの言葉に戻すことにしたが、せめて二文字の漢字にすることで、後戻りの形にはしない、というのが周囲の会員の意地があった。