バックを整理したら、紙吹雪が舞い落ちた。演舞場の千秋楽の日のスーパー歌舞伎の紙吹雪だ。普通だと観ないのかもしれないが、我が家の活動的な若者夫婦の影響で、その乘りに付き合ってきた。
行く動機になったのは、曾孫が必ずチャンネルを回す「ワンピース」なる番組が、よく掴めないことも気になっていたからかもしれない。新橋演舞場は八割は若者で埋まっていた。 この「ワンピース」を演じるにあたって、市川猿之助が危ぶむ声もあるかもしれないが、そうしたものを手掛けることで、本来の歌舞伎の演出に新たな道がつくかもしれない、というようなことを語っていたのも耳に残っていた。
二幕目では、主人公のルフィこと猿之助が観客の頭の上を行き交い、イルカも行き交う。果ては石段を思いっきりの水が流れて、その石段での役者の立ち回り。観客の全部が総立ちの手拍子。これはクライマックスだと思ったが、三幕目もあった。楽屋では大忙しだったらろう。
その三幕目で思いっきりの紙吹雪が飛んで、座っている膝に積もるくらいの量だったから、バックの中に入りこんでいたのだ。ワンピースとは財宝でそれを目指して海を渡る海賊物語だ。例えば子供時代の「宝島」「大菩薩峠」「里見八犬伝」など、物語の紡ぎ方で、いくらでも語は続くのかもしれない。 今回の歌舞伎は、コミックスの51~60巻で描かれる「頂上戦争編」だそうである。
うーん、疲れた。家路の夕闇の中に柊の花が匂っていた。手に取ると紙吹雪よりも白かった。