2012年7月 のアーカイブ
句集『白雁』
2012年7月29日 日曜日夜がきて蝙蝠はみな楽しさう 岩淵喜代子
2012年7月29日 日曜日『森』2012年8月号 主宰・森野稔
2012年7月29日 日曜日感銘句逍遙(23〉 筆者 森野稔
椎匂ふ闇の中より闇を見る 岩淵喜代子
椎の花は大木になり六月頃に雌雄別々の穂状花をつけて独特の強烈な匂いを発散する。暗がりの中にいてもそれだとわかる。夜、歩いていたら匂ってきた。作者は椎の木がどこにあるのだろうと闇の中を見透かす。闇の中でもそれとわかる巨大な木の塊がありその木下にはひときわ濃い闇がある。「闇」というリフレーンの異相に注目。「先ず頼む椎の木も有り夏木立 芭蕉」先日大津の国分山にある幻住庵を訪ねてきたばかりの私にとって椎の木はことさら身近に感じられる。当日は若葉だったが、咲き始めの花もあるらしく、匂いとともに穂伏の雄花が落ちていて庵守の男性が箒を手にしていた。「俳壇」六月号より。
登山靴命二つのごと置かれ
2012年7月29日 日曜日虫送り
2012年7月24日 火曜日田中佐和子句集『小春』 2012年7月 本阿弥書店
2012年7月24日 火曜日「くるみ」の門下生。主宰の保坂リエ氏の序に「家族にこれ程愛情を寄せた句集も珍しいし、句集とは斯くあるべし、の思いが、句集名の『小春』を揺るがないものにさせている、とある。
八十路とは遠くて近し花は葉に
春雷に打たれしごとく夫逝けり
踏切は人の世のものつばくらめ
小さき指小さき蟻を追つている
ぬくもりて湯豆腐ゆらりと動き出す
確実な描写力によって、確かな生きざまを感じさせる句集。
山中西放第二句集『炎天は負うてゆくもの』 2012年7月
2012年7月24日 火曜日「キャベツ剝く」「裸足の子」「置くtびに」「花火待つ」「炭酸水」
以上のような目次の見出しを読むと極めて卑近な位置から俳句を詠んでいるのが想像される。頁を繰るとやはり当初の印象通りだった。
飛ぶまでの飛蝗うぃ待ちし車椅子
痴の母のふるさと桜吹雪くなり
七月の郵便局の置き眼鏡
伍藤暉之句集『PASISA』 2012年7月 ふらんす堂
2012年7月24日 火曜日PASISA 伍藤暉之句集
柚子匂ふ闇を乙女の頬と呼ぶ
不知火を一喝したる夜汽車かな
イブのおもちやアダムのおもちや隙間風
冬菫ジョン・レノンをまた見つけたよ
にはとりの蹴爪のけはい霞より
「PASISA」としたのも、映画「戦火のかなた」の原題。一句一句が輪郭を持ったことで成功している。
大隅徳保著『風と雨の歳時記』2012年7月 諷詠社
2012年7月24日 火曜日一書には俳人には魅力のある雨の名前や風の名前が詰っている。
例えば「洗車雨」などは現在は町を走る車に降る雨を想像してしまうかもしれない。しかし、実際は牽牛と織姫の二人が乗る牛車を濡らす雨だ。雨の名前の由来を読むのが楽しい。
角谷昌子著『山口誓子の100句を読む』2012年7月 飯塚書店
2012年7月19日 木曜日「100句を読む」という本はこれまで随分出ている。しかし、今回の角谷さんの本はそれらと一線を画した重厚な内容である。単に一句一句の鑑賞だけではないからだ。 それはもう評伝と言っていい内容である。
この一書は生前の八田木枯氏から依頼を受け、その100句を選ぶことも木枯氏が関わっていたのである。角谷さんは誓子は自分から遠い俳人と言う認識を持っていたので、初めは戸惑ったようであるが、それがむしろ怜悧に一俳人と向き合えたのではなかっただろうか。