受贈しを読む⑱ 筆者 桑田和子
「ににん」(平成二十二年夏号)
平成十二年十月、朝霧市にて岩淵喜代子により創刊。代表。同人誌の気概というものを追及していきたい。通巻三十九号。季刊。
鬼の子に見せてあげたい万華鏡 岩淵喜代子
狐火を見し人逝きぬ薔薇の雨 々
おもしろてやがてかなしきえごの花 伊丹竹野子
韓国を望む岬の海照らし 宇陀草子
万病の薬は眠り草青む 尾崎じゅん本
万緑や耳をすませば羽の音 武井伸子
教へ子に教はる歌や花万来 牧野洋子
万緑や紙石鹸の匂ひして 宮本郁子
やはらかなものばかり食べ雛の日 川村研治
評伝『頂上の石鼎』岩淵喜代子著・第四十一回埼玉文芸賞受賞記念特集が組まれ、酒井佐忠氏の書評に始まり、寺本喜徳・西村和子・石田修犬・小川軽舟・五島高資・坂口昌弘・藤本安騎生氏等の書評を転載している。
かなしさはひともしごろの雪山家 原 石鼎
秋風や模様のちがふ皿二つ
頂上や殊に野菊の吹かれ居り
秋はあはれ冬はかなしき月の雁
酒井氏は、本書は石鼎の人物像や何業など石鼎文学の本質を多様な角度から入念に追求した好著であると述べている。また、藤本氏は『頂上の石鼎』は、俳人として、人間としての石鼎の栄光と哀切を師愛の精神と視座を貫いて書かれていて読後が清涼であると述べている。著者は石鼎の句の生み出された現場に幾度も足を運び執筆されたようだ。
他に牧野洋子氏の「何何燦燦~〈万〉いろいろ」、正津勉氏の「歩く人・碧梧桐」、田中庸介氏の「わたしの茂吉ノート」、長嶺千晶氏の「預言者草田男」、木佐梨乃氏の英語版「奥の細道を読む」等、夫々の書き手の気概を感じた。