2011年8月 のアーカイブ

「ににん」44号編集中 ①

2011年8月30日 火曜日

原稿は数点をのこしてほぼあつまったので、現在は50パーセントくらいの雑誌の進行状態だ。全部が揃うまでに割り付けやら、埋め草やらの用意をして、校正原稿をスタッフに送る、というような仕事を少しずつ進めておく。

  待つことに慣れて大きなかたつむり (硝子の仲間)     喜代子

いまはこんな感じで、過す日々である。もっともわたしの仕事自体が蝸牛ほどにとろとろと進むので、原稿がポツリポツリと入ってきても構わないのだ。ひとり編集というのは融通が効く。さらにはこのごろは、集まらないでどうしようかなどと気をもまないほど、割り付け方にも慣れてきた。

やっと初代のパソコンを破棄する段取りをした。使えばまだ使えるパソコンだが、持ち運びの出来るノートパソコンは便利である。故障したり遣い慣れしていな部分を知りたいときも、いちいち来てもらわなくても、パソコンを抱えて出向けばいいのだ。

中本真人第一句集『庭燎』2011年  ふらんす堂

2011年8月26日 金曜日

  僧に向き檀家に向きて扇風機

つくづく俳句が「視る」いう行為から生れるものであることを感じる句集である。扇風機の本位をきわめてリアルに、それでいて扇風機以外の何者でもない詠い方が現代的である。

  民宿の庭に伏せたる若布刈舟
  夜桜を見回りの灯のよぎりけり
  鷹狩の軍議のごとき打ち合せ
  続き咲く花に初花紛れゆく
  虫干の巻物伸ばす廊下かな
  御旅所にどつかり座り何もせず
  回送のバス涼しげに走りさる

あとがきの最後に「20代最後の日に」と書き込んでいることで自ずと年齢が分かるまだ若い作家である。そのあとがきを見ないで読んでいたときにはもっと年齢を重ねた俳人かと思ったほど着実な写生句で好感のもてる句集。『セレクション俳人・プラス・選集21』に収録されていた作家の第一句集である。

里川水章第四句集『鳥雲に』 2011年 ふらんす堂

2011年8月25日 木曜日

「天狼」の手堅い俳句手法を得た作家の一集。

  初音聞く天の岩戸の対岸
  百人のお会式太鼓音一つ
  精神科芽吹きの時の一斉に
  鴨塚の囲ひの中を鴨歩く
  芒長け渡り坑夫の墓隠す

ことに四句目「鴨塚」・五句目の「芒長け」の淡々といいとめた光景に詰まった時空が一句の厚みになり、生のかなしみを滲ませている。

お盆の里帰り

2011年8月16日 火曜日

110815_0939~01 ゴウヤが二階の窓まで登って、そこでも実をつけていた。食べるのにはあと数日かかるだろう。うっかり窓を開けて写真を撮ろうとすると蜜蜂がうろうろしている。マーしかし、蜂さんのおかげで実がなったのだろう。今日は8月15日。このところテレビは終戦直前と直後の事件をドキュメント形式で、各チャンネルで放映している。昨日は天皇陛下が終戦を決意したことやら、それを阻止する青年将校やらの話を聴いていたが、知らない事が多い。戦犯として裁かれた人達はたくさんいるが、その以前に自害した軍人たちもたくさんいたようだ。

以前は私達一家が里帰りをしていたが、このごろはされる方にまわった。、午後2時ごろから家をでてくるという娘一家の到着は遅くなるらしい。Uターンラッシュの最中なので、真夜中を覚悟で出発というメールがきている。

今夜の食事は作らなくっていいのだが、なんだか朝から落ちつかない。娘の送ってきている3ヶ日間の予定表では明日も朝から出掛けることになっているから、明日の夕食もどこで食べるのか分からない。そんなことを思いながらスーパーを巡っていたら肉売り場でスペアリブに目が行った。いつもは殆ど買わない種類だが、娘一家にスペアリブは似合う気がして籠に入れた。その次に入れたのが牛蒡だった。待っている間に煮こもうと思った。

夕方、どの辺と聞いたら福島だと言った。驟雨があったらしい。夕食後の片づけをしながらそして肉を煮ながら待っている、とやってきた。やってきた。田舎の御土産は豪快である。孫の嫁ぎ先は農家ではないが、その父親の実家からの大量の味噌、とずんだ餅。どうやって食べきればいいんだという感じ。味噌は誰かにあげられるように小分けした。ずんだ餅も臼でついたそのままを袋に入れてきた感じなので、やはり小分けにして冷凍庫に入れたら真夜中になった。

池田澄子第五句集『拝復』 2011年  ふらんす堂

2011年8月13日 土曜日

俳句は「存問」の詩と言われている。それを現代的に言えば「拝復」となるのだろう。この句集には,出会った対象、即ち湧き水でも自然薯でも雲雀でも、目に触れたものが、池田さんの身体を通って言い表されている。

 湧く水は流石に飽いているらしく
 引く鶴の気持ちになれば胃痛し
 自然薯の永き我慢を摺りほぐす
 気が済んだらしや雲雀の落ちきたる

もうひつ気がついたのはリフレインの多い事。口語で俳句を詠むことは韻律から離れやすい。それが無意識のうちにリフレインによって韻律を持たせようとしているようにも思える。

 生々世々春は春菜を胡麻汚し
 じゅうろくささげ昔しゅるしゅる焼夷弾
 古今東西恋や未練や邪恋や芽
 あかしあと偽あかしあとか老いながら
 相模さみだれ笹叢の蜘蛛の囲さやか
 墓立っている我立っている凍晴

池田さんの珍しくも唯美主義的な一句を見付けた。

  指牢の蛍を覗かせてもらう

この「指牢」は造語だろうか。掌を軽く握って蛍を閉じ込めておく指の隙間から洩れる蛍の光が妖しい光に言い現わされている。ジャンケンに負けて生れたホタルの成れの果てのようにも思える。

佐山哲郎句集『娑婆娑婆』2011年   西田書店

2011年8月13日 土曜日

一言でいえば、とても多彩な作家だと思った。パソコンで句集名を書こうとして気がついたのが、バサの漢字変換は出るが、サバは出ない。仕方がないから婆娑を三回書いて前後を消したら、「娑婆娑婆」になった。 

  紋付でかしこまりたる蝶だもの
  さつきまで猫の直会青葉闇
  一村をあげてそらまめ合唱団

作者が「コクリコ坂から」の原作者だと思わなくても、このあたりからは、アニメ的な映像を想像させてくれる。三句目の「一村を」などは表情も見えてきて、ことに好きな作品。そういえば、映画「コクリコ坂から」は昭和を再認識させてもらった。東京オリンピックの前年があんなに懐かしい風景になるのだ。アニメの映像も色彩も柔らかくて、心地よい映画だった。

   赤帽も浮浪児も陽炎の駅
  あの勅語から動かざる蝸牛
  大泣きに泣いてからつぽ夏柳
  焚火から離れて薄くなりゆけり

このあたり一瞬、戦中派かとおもったが、作者は戦後生れ。多分勅語は直後からの発想かもしれない。こうした多彩なことばは、作品からも伺うことが出来る。最後の「焚火から」が、なかで一番情緒的な句柄で、しかも感覚の冴えもさりげなくていい。

三田きえ子第七句集『藹藹』 2011年 俳句四季

2011年8月4日 木曜日

はるかより夜の汐にほふ吊忍
水鳴るは笛鳴るごとき良夜かな
ぼうたんに起居憚りゐたりけり
椋の木に椋のきてゐる春隣

端正な姿の立ち上がる句集。それは自然諷詠が自然の気配を掴み取ろうとする詠みかたにあるのではないだろうか。結社「萌」を主宰する昭和6年生れの作家である。

大田土男『自然折々・俳句折々』 2011年  杜陵印刷

2011年8月4日 木曜日

俳誌「草笛」と「百鳥」に連載していたものを一書にまとまたもの。まえがきで、「俳句との関わりを考えながら綴ったものであり・・」と書き記している。
作者は農林水産業に入り、農業環境の研究に従事してきた人のエッセイである。「自然折々」は、出会った自然風景の視点が研究者らしい筆致で書かれているので、教えられることが多い。「俳句折々」も百鳥に執筆していた俳句鑑賞でやはり研究者の自然生態を視座におきながらの鑑賞となっている。

中西夕紀第三句集『朝涼』2011年 角川書店

2011年8月4日 木曜日

鮎の国行く先々を雨打ちて
佃煮の包み平たし都鳥
遠き人鏡に映り日短か
蟇無々といふ顔していたり
寄りかかる何もなけれど夏座敷
浮いてゐる紙が値札ぞ海鼠桶
伊勢海老の二藍の色誉めにけり
熊の胆を切り分けてゐる雪祭
雪見舟蘆のほとりを通りけり
春燈のわづかを使ふ画廊かな
胸元に押し付けてくる林檎かな
掌にのこる畳の跡も雁の頃

写生をひとたび自分の内側で咀嚼して表現に置き換える、ということの殊に意識を寄せている作家ではないかと思う。だからと言って誇張した表現で無理をしていない。それが読み手にはありがたい。一句目の鮎の獲れる時期、その里が雨の中だったという風景。それを行く先々を雨が打つていたという切り取り方にするのが作者流ということだ。

佐藤ゆき子第三句集『遠き声』 2011年 角川書店

2011年8月4日 木曜日

  ジャズ流れ新樹に影の生れくる
  心太足遊ばせて食べにけり
  さくらんぼ一つ食べては目を見張り
風景への作者の視線のなぞれる句。ジャズと新樹、それだけでも取り合わせの妙があるが、それに加える「影が生れくる」の時間の推移が心地良い空間を作っている。

  春の鴨水面引つぱりつつ泳ぐ
  音もなく賑はってをり蝌蚪の国
  同窓会のやうや日当る蜜柑山
視線がさらに感覚を加えて、一句目の「水面引つぱり」、二句目の蝌蚪の国が賑わっているという見立て、三句目の「同窓会のよう」だという比喩が風景を膨らませる。

  思ひ出のところどころに雛あられ
  鰤一本貰ひうろうろして日暮
以上の時間の現わし方をいい。

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