2013年3月 のアーカイブ

『ににん』50号 春号発送

2013年3月31日 日曜日

50号はこちらが印刷所に入れるのもいつもより数日遅れていたが、印刷屋さんのほうも決算期で忙しかったとかで、校正も遅れていた。今月はどうなるのかなーと案じていたが、昨日ぎりぎりのところで手元に届いた。とっても律儀な印刷屋さんである。このごろは、自分のところに配達される荷物が今どの辺にあるのか検索が出来るのである。

まーわざわざ検索を掛けなくても、発送しましたというメールが届けば翌日には配達される。当り前のようだが、送り主は広島である。29日の夕方印刷屋さんが発送した荷物が、30日の夕方には自宅に届くのである。それから用意していた袋に入れて、ようやく夕方には集配に来てもらう段取もついた。明日はもう4月である。

今井肖子第一句集『花もまた』 2013年2月 角川書店

2013年3月28日 木曜日

 今井千鶴子氏を祖母に持ち、今井つる女氏を母に持つ作者は俳句の空気が濃密に漂う生活の中で過してきたのかもしれない。それを幸運とするのか不運とするのか定かではないが、俳句は幸運な歩み方で作り続けられてきたような気がする。

鴉飛ぶ屏風に風の起りけり
手のひらをこぼれてゆきし子猫かな
肩先に若葉の影をのせ歩く
花も亦月を照らしてをりにけり
遠い目をしてまた吹いて石鹸玉
星ひとつなくて地上に阿波踊
桜から少し離れて息を吐く
青空にはね返されて鵙高音
歳晩の空に列車の音消ゆる
風花の山から海へ消えにけり

 言ってみれば幸運も不運も作者の心の寄せどころになるのだ。幸運だとおもうこころが、対象物を非常に率直に、しかし、鋭い視線で捉えられている。それが本質を炙り出していて、一句ずつ頷かせる。

伊藤敬子十五句集『淼茫』  2013年2月 角川書店

2013年3月23日 土曜日

山の蟻てのひらに載せ葉にもどす
川沿ひを来て加はりぬ盆踊
手をつきて地のあたたかし桃の花
一群のまた一群の小鳥来る
雪踏めば荒星の座のうつる音

伊藤桂吉氏の序には「沈静の詩魂と叙情」についてが語られ、榎本好宏氏の跋では、「挨拶」と「存問」が語られている。
五句抜き出した中でも三句目の「手をつきて地のあたたかし桃の花」が伊藤氏の温恭な句作りの中枢をなすものではないかと思う。

鳥居保和第三句集『星天』 2013年3月 文学の森

2013年3月23日 土曜日

大粒も大粒屋久の大夕立
国道を横切る屋久の大蟹よ
千尋の一枚巌の瀑布かな
野仏に湯気立つ霜の朝かな
さざ波のごと粉雪の地を這へり

風土へのあこがれが、風土を詠ませる、という姿勢が見えてくる。それは句集には大を使った句が随所にあるからだ。風土への感嘆が「大粒」になり「大蟹」になるのだろう。

渡良瀬遊水地蘆焼き

2013年3月17日 日曜日

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何年か前にも行ったことがあったのだが、その時どの辺から見たのかすっかり忘れていた。
今回は東武線の板倉東洋大前駅下車した。駅を降りたら烏の羽のようなものがあちらこちらから舞い降りてきた。蘆の燃え殻のようだ。
空の半分が煙で覆われ、火は反対側から進んできた。大きな爆発音がしていたが、蘆の茎が破裂するのだろう。
足尾銅山の鉱毒で一村が全部立退いた広大な土地だから、その葦原も広大である。
火の遠くの方にも火が立ちあがったりして、どこまであるのか見当がつかない。
ここは栃木と群馬と埼玉にまたがっているらしい。

土筆

2013年3月16日 土曜日

今年の散歩は大きなマスクと大きなサングラス無しでは歩けない。そろそろ土筆も出ている筈だと思って、いつもより散歩の足を伸ばしてワクワクドームと呼ぶ市のスポーツセンターまで行った。一階のフロアーに揉み機が置いてあったので、20分ほどその椅子で休んでの帰り道で見つけた。土筆を!
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多分数日したら、そこに一面に土筆が生えそうだ。そこここに頭が見えている。土手の桜も蕾が膨らんできて、雪洞のための杭が打ちこまれた。

鳥帰る

2013年3月12日 火曜日

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今日はににん50号の初校も印刷所に入ったので、ようやく一段落。それを見ていたように、映画好きの会員から映画のパンフレットが送られてきた。劇場に通っているときには情報が目にとまるのだが、少し間が空くと、忙しさに紛れてしまって、見ようと思っていたものが終っていたりする。明日は渋谷のル・シネマで上映のバレー「 ドン・キホーテイ」を観に行こうと思っている。

飯野きよ子第三句集『花幹』 2013年2月 角川書店

2013年3月6日 水曜日

星とんでからだの中に島一つ
春愁の麒麟が空を舐めてをる
春の猫闇の四隅に髭触れて
障子貼るくわりんの一つ在るうちに
草束ね置く八月の父の椅子
しもつけの闇がおほきな蛍籠

風土を身体感覚で受け止めた誠実な作風。一句目の星の宇宙と我が体内の宇宙が重層的にひろがる。二句目の(空を舐める)も納得できる。

永瀬十悟句集『朧橋ーーふくしま記』 2013年 コールサック社

2013年3月6日 水曜日

雁風呂と名付けて六日振りの風呂
流されてもうまいはずの橋朧
春愁か怒りかマスクするばかり
牡丹園瓦礫置場となつてをり
月の道ひとりのときは跳ねもして
軒の雪まだ引つ掛かる力あり

「ふくしま」50句で角川俳句賞を受賞した作者の第一句集。時節柄も加えて話題になった俳人である。どの一句を取り上げてもいいように、どれもが破綻なく誠実に読み上げていて、好感をもつ作風である。

田口紅子『土雛』 2013年2月 ふらんす堂

2013年3月6日 水曜日

栞 村上護

水面より空のはじまる大旦
白鷺の水をはなれず牧水忌
ぽつかりと花の奈落となりし谷
ぶつかりあひて鶏頭の赤くなる
枯るるもの葦原に音生みにけり
どかどかと来てなまはげのどかと去る

筆太の写生、その写生も確かな感覚の裏づけから得られているので、読み手の共感を二重に得るのだろう。

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