今井肖子第一句集『花もまた』 2013年2月 角川書店

 今井千鶴子氏を祖母に持ち、今井つる女氏を母に持つ作者は俳句の空気が濃密に漂う生活の中で過してきたのかもしれない。それを幸運とするのか不運とするのか定かではないが、俳句は幸運な歩み方で作り続けられてきたような気がする。

鴉飛ぶ屏風に風の起りけり
手のひらをこぼれてゆきし子猫かな
肩先に若葉の影をのせ歩く
花も亦月を照らしてをりにけり
遠い目をしてまた吹いて石鹸玉
星ひとつなくて地上に阿波踊
桜から少し離れて息を吐く
青空にはね返されて鵙高音
歳晩の空に列車の音消ゆる
風花の山から海へ消えにけり

 言ってみれば幸運も不運も作者の心の寄せどころになるのだ。幸運だとおもうこころが、対象物を非常に率直に、しかし、鋭い視線で捉えられている。それが本質を炙り出していて、一句ずつ頷かせる。

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