佐藤ゆき子第三句集『遠き声』 2011年 角川書店

  ジャズ流れ新樹に影の生れくる
  心太足遊ばせて食べにけり
  さくらんぼ一つ食べては目を見張り
風景への作者の視線のなぞれる句。ジャズと新樹、それだけでも取り合わせの妙があるが、それに加える「影が生れくる」の時間の推移が心地良い空間を作っている。

  春の鴨水面引つぱりつつ泳ぐ
  音もなく賑はってをり蝌蚪の国
  同窓会のやうや日当る蜜柑山
視線がさらに感覚を加えて、一句目の「水面引つぱり」、二句目の蝌蚪の国が賑わっているという見立て、三句目の「同窓会のよう」だという比喩が風景を膨らませる。

  思ひ出のところどころに雛あられ
  鰤一本貰ひうろうろして日暮
以上の時間の現わし方をいい。

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