佐山哲郎句集『娑婆娑婆』2011年   西田書店

一言でいえば、とても多彩な作家だと思った。パソコンで句集名を書こうとして気がついたのが、バサの漢字変換は出るが、サバは出ない。仕方がないから婆娑を三回書いて前後を消したら、「娑婆娑婆」になった。 

  紋付でかしこまりたる蝶だもの
  さつきまで猫の直会青葉闇
  一村をあげてそらまめ合唱団

作者が「コクリコ坂から」の原作者だと思わなくても、このあたりからは、アニメ的な映像を想像させてくれる。三句目の「一村を」などは表情も見えてきて、ことに好きな作品。そういえば、映画「コクリコ坂から」は昭和を再認識させてもらった。東京オリンピックの前年があんなに懐かしい風景になるのだ。アニメの映像も色彩も柔らかくて、心地よい映画だった。

   赤帽も浮浪児も陽炎の駅
  あの勅語から動かざる蝸牛
  大泣きに泣いてからつぽ夏柳
  焚火から離れて薄くなりゆけり

このあたり一瞬、戦中派かとおもったが、作者は戦後生れ。多分勅語は直後からの発想かもしれない。こうした多彩なことばは、作品からも伺うことが出来る。最後の「焚火から」が、なかで一番情緒的な句柄で、しかも感覚の冴えもさりげなくていい。

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