《星野紗一全句集》2010年9月  東京四季出版刊

第一句集『ねばりひき』
オーバー貧し馬が重なり写る玻璃
冬の香水小さい椅子に待たされて
冬の水飲みぬ妻子が寝ねてより
パンの皿より軽しモンマルトル枯れ

第二句集『木の鍵』
何も書かない黒板光り秋の蝉
白を失なふ鶏のだんまり冬の霧
満月の丸太ごろごろ逢引す
大学の入り口よごれ寒雀
もう一人の俺が陽気な黄風船

第三句集『鹿の斑』
鹿を見てゐて鹿の斑が妻に
狐火の近づき白き置柄杓
賢者の目愚者の目ごきぶり増ゆる国

第四句集『置筏』
渡り鳥消えたるあとの置筏
むかしむかしの尾がのた打つてゐる野焼
太陽に輪がある不思議鬼芒
冬桜近くて己が眉が見え

長谷川かな女に難解派と呼ばれていたのが頷ける作風が見られる。自ら俳句と格闘しながら、もっと上を目指す理想派なのではなかったか。その形を抜けようとするエネルギーが、作者の呼吸を読み手に伝える。

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