風呂を焚くという生活、土筆の袴を取るという所作、どこかの草庵の暮らしが思われる風景だ。そのことが、ごく自然な表現で言い留められていることで、作者の日常と一枚になった風景として肯えるのである。それは、(月祀るものに弓矢のひとつがひ)(思惟仏の裾より足を出す愁思)(持ち替へて一つの荷物夕薄暑)などにも感じられる。
飯田正幸句集『ひよんの笛』 2015年 本阿弥書店
風呂を焚くという生活、土筆の袴を取るという所作、どこかの草庵の暮らしが思われる風景だ。そのことが、ごく自然な表現で言い留められていることで、作者の日常と一枚になった風景として肯えるのである。それは、(月祀るものに弓矢のひとつがひ)(思惟仏の裾より足を出す愁思)(持ち替へて一つの荷物夕薄暑)などにも感じられる。
飯田正幸句集『ひよんの笛』 2015年 本阿弥書店
このごろは落葉焚きの出来るところが少なくなった。
いくら掃きよせてもそれ程大きな嵩にはならない落葉の山を燃やすのは穏やかな風の無い日を選らぶ。火をつけても、ゆっくりと燃え上がる落葉焚火は煙が先に空を目指して昇ってゆく。その煙の柱に日ざしが当たる。それが、なぜか心の平安の象徴のようである。
ほかに(散紅葉その真中より立てる幹)(寒林の人声やがてすぎにけり)(蕗の葉のそよぎおくれぬ草の中)など、作者の視線に共感する作品が並ぶ。本郷大地句集『天鼓』 2015年 文学の森
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