蓑虫の鳴くや衣の十重二十重    浅井民子

蓑虫は気が付かなければ、雲の糸の端に木の葉の屑が絡み合っているかのように思えてやり過ごしてしまう。知ってしまえば、いかにも俳諧に相応しい季題でもあるのだ。飯島春子はその撒き付いている木の葉を(蓑虫の蓑あまりにもありあはせ)と詠んでいる。掲出句は十重二十重としている。一見写生的だが、その措辞によって人生を象徴しているようにも思える。
浅井民子句集『四重奏』 2017年 本阿弥書店

コメントをどうぞ

トップページ

ににんブログメニュー

HTML convert time: 0.175 sec. Powered by WordPress ME