2015年10月3日 のアーカイブ

石垣の上の青空曼珠沙華   鈴木しげを

2015年10月3日 土曜日

鈴木しげを句集『初時雨』 2015年9月  角川書店より

きわめて鮮明な切り取り方である。そうして単純明快な切り取り方である。そうでなければ、曼珠沙華の赤さは伝えられないのだ。繊細で鮮烈な曼珠沙華という花は、語れば語るほどその輪郭が薄れていってしまうからだ。ほかに(十夜寺海に星出てゐたりけり)(打座といひ即刻といひ梅眞白)(春霰はねて木賊のまはりかな)など。

鷹柱立つてふ山に鷹一羽  増成栗人

2015年10月3日 土曜日

増成栗人句集『遍歴』 2015年9月  本阿弥書店より

作者は芭蕉の(鷹ひとつ見つけてうれし伊良虞埼)を念頭におきながら鷹をうち眺めていたのだろう。そうして、その芭蕉は(巣鷹渡る伊良湖が崎を疑ひてなほ木に帰る山帰りかな 『山家集』)(ひき据ゑよいらごの鷹の山がへりまだ日は高し心そらなり『壬二集』)などの歌を念頭におきながら鷹の句を詠んだのであろう。他に(米原で大勢が降り入り彼岸)(人と座し仏と座して日の短)(傘寿とは夕かなかなの十重二十重)など。(筆者・岩淵喜代子)

火の神をねぎらふ冬至祭せむ   矢島渚男 

2015年10月3日 土曜日

矢島渚男句集『冬青集』 2015年9月 ふらんす堂より

古代から火はさまざまなシーンを物語る中心にあった。怖いものであると同時に、片時も無しでは人間の生活は成り立たない。(ねぎらう)には、そうしたもろもろの思いが重なっているのだろう。普段は何気なく見過ごしているものに立ち止まらせるのも、季節の節目というものなのだろう。ほかに、(蜥蜴らにジュラ紀の眼麦の秋)(毛の国は雷神の領出会いたし)(犬は犬呼びとめてをり春の暮れ)。(筆者・岩淵喜代子)

みしみしと夕顔の花ひらきけり   岩淵喜代子

2015年10月3日 土曜日

「太陽」10月号 【秀句の窓】 筆者・高下なおこ

(夕顔のひらきかかりて襞ふかく  杉田久女)の句に見えるように、夕顔のつぼみは細かい襞が固くたたまれている。その襞が解けていくときには「みしみしと」音がするという。ここにも作者の想像力の豊かさが覗える。俳句は詩であるということをまざまざと見せられた。

夜光虫の水をのばして見せにけり    岩淵喜代子

2015年10月3日 土曜日

「太陽」10月号 【秀句の窓】 筆者・高下なおこ

夜の波間に漂って青白い光を放つ夜光虫。昏い海面にゆらゆらと揺れている様は幻想的である。正体不明の夜光虫をズームアップして見つめる作者と夜光虫とのやりとりが微笑ましい。「水をのばして見せにけり」に作者の感性がひかる。

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