第一句集である『月下樹』の名にある月下樹とは種から育てたサボテンに名付けた花名だそうである。そんなところにも、句集の独自性が匂っている。
春一番パセリはいつも昏れ残る
朝市の海鼠のような海鼠売り
哲学をひっかけておく冬の釘
花野へとつながっている非常口
裸木となっても父の匂いする
指差して白い椿を近くする
作者の後書きによると前半は書下ろし、残りがこの十年ほどの作品だという。やはり後半の作品がとくに輪郭をしっかり得て面白かった。
第一句集である『月下樹』の名にある月下樹とは種から育てたサボテンに名付けた花名だそうである。そんなところにも、句集の独自性が匂っている。
春一番パセリはいつも昏れ残る
朝市の海鼠のような海鼠売り
哲学をひっかけておく冬の釘
花野へとつながっている非常口
裸木となっても父の匂いする
指差して白い椿を近くする
作者の後書きによると前半は書下ろし、残りがこの十年ほどの作品だという。やはり後半の作品がとくに輪郭をしっかり得て面白かった。
夏山を見よと単線曲るなり
地を這うて日暮のきたる種茄子
ほたる火にいつしか息を合せをり
竹夫人倅が借りていつたきり
たましひに色ありとせば月の色
耕してたがやして山近くなる
青すぎる空に疲れて一葉落つ
「誰もが見ていて、誰も詠まぬ独自の世界に・・・」と師の黛執氏の帯文にあるように、文芸は誰もが見ていることを掬い取れるかどうかにあるのだとおもう。
一葉の落ちる様を十人が十人なりの世界として切り取ることで、詩は面白いのである。角川賞受賞者。
『点描画』『風速』『轍』『五十年』から収録した作品抄。
空占めて落葉松の芽の点描画 点描画
焚けば火の透明となる油照
ごきぶりの闇に高級乗用車 風速
桐の実よ鯵の干物を焼く母よ
薄闇の中に濃き闇箒草 轍
つちけむり消えて轍や麦の秋
白魚に葉脈ほどの骨ありき 五十年
大寒や鉄のごとくに水動く
初期の感覚はやがて取り合わせに冴えを発揮してゆく。ことにごきぶりと乗用車の知的な取り合わせと桐の実と鯵の干物の感覚的な取り合わせに集約されている。
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