2012年11月6日 のアーカイブ

『鷹』2012年11月号  主宰・小川軽舟

2012年11月6日 火曜日

俳壇の諸作    筆者 大石香代子

万緑や火の坩堝から汲むガラス   岩淵喜代子    
俳句9月号 「半夏生」より

森のなかのガラス工房が思われる「万緑叢中紅一点」の故事成語にある紅花を、坩堝から巻き取った金属パイプの先の真っ赤な溶解ガラスの一玉になぞらえ、それが周囲の木々の緑に鮮やかに映えるさまに転化した句は、現代的な美とエネルギーに溢れている。すぐさま息が吹き込まれてどんどん成形されて製品となることを、下五の硬質なカタカナ表記が伝える。冷えたガラスはやがて木々の緑に新しい息吹を与えるようだ。

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