俳誌探訪 筆者 高野礼子
「ににん」 夏号 通巻43号 代表/岩淵喜代子 発行所/埼玉県朝霞市
今号の巻頭頁は、清水哲男氏が「震災詩歌」を執筆。続いて、一誌の特徴である「物語を詠む」のコーナーは、石原慎太郎氏の『人陽の季節』を詠んで二十四句。その作品より。
一撃のボディフックや目雷 伊丹竹野子
太陽の季節遠のく秋の空
「ににん集」 「(独)一字を詠み込んでの作品)より。
ジャズピアノ独身行族といふ日焼け 長嶺 千晶
独活大本鬼も独りになるときか 岩淵喜代子
なゐ去りて寡独の増えし夏港 辻村 麻乃
「さざん集」より
夏立ちぬ南蛮潰の酢が効いて 平林 恵子
しゅわしゅわのグラスを透かす夏景色 木佐 梨乃
連載評論は、『預言者草田男』を長嶺手品氏、「この世にいなかった俳人』を岩淵代表、『わたしの茂吉ノート』を田中庸介氏、『歩く人・碧梧桐』を正津勉氏と、共に丹念に書かれていて、それぞれの作家の人問的魅力が伝わってくる。その他に、ミニェッセイの「月下独酌」、「吟行燦燦」、「俳句の風最」、「奥の細道を読む」など、中味の濃い充実した内容である。