序・戸恒東人
跋・三浦郁
若葉風少女の帽子欲しげなり
こはさるる身を美しく冷奴
夕立後のコート再び敵味方
七人の僧一卓にところてん
鼓ならばポポと鳴りたき朧かな
噴水の踊るアルゼンチンタンゴ
満ち潮に沈む階段冬かもめ
対象に埋没することで言葉を得ている作品集。それがあやふいところで、均衡を保つことが「危険水位」の題名を得たのかもしれない。
序・戸恒東人
跋・三浦郁
若葉風少女の帽子欲しげなり
こはさるる身を美しく冷奴
夕立後のコート再び敵味方
七人の僧一卓にところてん
鼓ならばポポと鳴りたき朧かな
噴水の踊るアルゼンチンタンゴ
満ち潮に沈む階段冬かもめ
対象に埋没することで言葉を得ている作品集。それがあやふいところで、均衡を保つことが「危険水位」の題名を得たのかもしれない。
他誌拝見 筆者 小泉静子
「ににん」三九号
代表 岩淵喜代子
平成十二年一〇月、朝霞市で岩淵喜代子により創刊。同人誌
の気概ということを追求していきたいとある。 〔季刊〕
「三島由紀夫の『憂国』を詠む」
黙契の懐剣しかと二月尽 伊丹竹野子
「きむらゆういちの『あらしのよるに』を詠む」
掟より守りたきもの冬董 望月 遥
「代表作品」より
万の鳥翔ちて一羽の自雁も
万巻の書のひしめきや桜散る
万行の果ての薔薇の芽牡丹の芽
「ににん集・万」より
万緑や耳をすませば羽の音 武井 伸子
万代も此の地に咲くや曼珠沙華 中島 外男
鳥海山万年雪は雲に触れ 長嶺 千晶
万蓄の椿息づく地蔵院 西田もとつぐ
「さざん集」より
うす赤き脚ふんばりて雀来ぬ 田中キミ子
水音もベースの音も五月の夜 同前悠久子
まんさくや母の眺めし空のおり 牧野 洋子
終電の音届きしか吊し雛 山内美代子
特集〈岩淵喜代子著『頂上の石鼎』書評〉を酒井佐忠氏が「精神の放浪性を探る」と題し書かれている。「放浪詩人」といわれた原石鼎。酒井氏は取材に伴う紀行文と資料に基づく作品
鑑賞を合わせて、著者の石鼎に寄せる視点と思考を考察している。「下連雀の眺め」清水哲男氏。連載評論は正津勉、田中庸介、長嶺千晶氏ほか随筆など多彩な内容となっている。「ににん」のさらなるご活躍を祈る。
10月2日、3日に行われた羽黒山の俳句大会選者を勤めてきた。この大会の歴史は古く、昭和31年に虚子が選者となって以来、毎年行われている。この機会を生かして羽黒山だけでなく湯殿山も見てこようかということになり、総勢八人の一行で訪れた。
いでは文化記念館の伊藤さんが鶴岡駅までマイクロバスで迎えに来てくださったので、思いっきり楽な旅が始まった。初日の目的は羽黒山の五重塔である。五重塔はたくさん見ているが、ここの五重塔は何故か印象的で忘れられなかった。なぜ忘れられなったかといえば、素木の塔だったからだろうか。
その塔が杉の樹間のどこから見ても美しかった。夜、あちらで用意してくださった私の部屋に入ったときに、その部屋をめぐる廊下の木材が同じものであることに気がついた。木目の間が白く浮き出る。その白さが一見白い色を塗ったかのようにも見えたのだ。
部屋は斎館の奥まった位置にある香嵐亭という二部屋続きの茶室。朝、ガラス戸の外を狸が横切った。仲間たちの部屋がどこなのかわからないほど広い建物である。二日目の大会の賞品にはお米も出た。それが10月1日に発売された「とち姫」。やっぱり庄内平野だ。
2日目の宿泊場所は湯野浜温泉で部屋から弓なりの水平線が見えた。その夜も宴会だ。3日目は宿のそばにあるクラゲの水族館を見てから、湯殿山へむかった。金子兜太が腰を抜かしたという逸話の残るご身体も仰いだ。
前日、宮司さんがこことは違う山菜料理へ案内するとおっしゃってくださったとおりに、山菜の数々が並んだ御膳を用意して待っていてくださった。鶴岡の駅から帰路に着くまでの三日間、ほんとうに熱い歓待を受けてきた。同時に大会に寄せる地域の方々の意気込みも感じられた。
ぼろ市の夕闇吊られゐるごとし
七草の数をひもとくやうに解き
母と子の帽子を重ぬ望の夜
空蝉を洞のひとつに数へたり
かがみゐて芙美子旧居の蟻急かす
噴井鳴る真つ暗闇を力にし
桔梗の白の折目にかくれなし
水撒くは光撒くこと種物屋
上田五千石を父に持つ「ランブル」主宰。手固い写生詠を底力に着実な句作りは、その人柄の現れでもある。文は人なりというが、俳句もまた人なりだとしみじみ感じる句集だった。
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