‘他誌からの転載’ カテゴリーのアーカイブ

探梅のしばらく刃物屋にゐたる    岩淵喜代子

2015年7月6日 月曜日

『火星』 2015年7月号  俳壇月評  筆者 涼野海音

探梅の途中の刃物屋だろう。「しばらく」という言葉が、探梅の時間と刃物屋にいる時間の両方を思わせる。『俳句』四月号「永き日」より

 

『青垣』  2015年7月号 俳句の秀峰  筆者 代田幸子

折角の梅を見に来たのに寒かったのあろうか?何か買うともなく時間を潰してしまった。俳味があり、刃物屋の措辞によりちょっとした屈折感が生まれてユニーク。俳人好みの句を自在に作れる氏の力量を思う。

『暁』 2015年7月号より

2015年7月5日 日曜日

受贈俳誌を読む ㊻   筆者・桑田和子

「ににん」(平成二十七年春号)
平成十二年十月、埼玉県朝霞市にて岩淵喜代子により創刊。代表。「同人誌の気概」ということを追及していきたい。通巻五十八号。季刊。
「ににん集・時計」より

春塵を払ひ目覚まし時計捲く 岩淵喜代子
鳥雲に入る裸木のうらおもて
梟が柱時計になつてゐる  川村 研治
亀鳴くやピンクの砂の砂時計 新木孝介
寒すずめ時計回りに啄みぬ 尾崎淳子
花疲れして腕時計外しけり 武井伸子
鳥渡る水の涸れたる水時計 牧野洋子
山眠る庫裏に正午の時計鳴る 宮本郁江

『二冊の鹿火屋=原石鼎の憧憬』岩淵喜代子著。第二十九回俳人協会評論賞受賞記念特集が組まれ、田吉 明・坂口昌弘・筑紫磐井氏等の書評がある。
松朽ち葉かからぬ五百木なかりけり  原 石鼎
神霊こもるここのこの間に風炉の名残
頂上や殊に野菊の吹かれ居リ

岩淵喜代子の評論集『二冊の「鹿火屋」』は原石鼎にとっての神の問題を評論の主たるテーマとしており、論じるのは難しい。岩淵氏には既に『評伝 頂上の石鼎』がある。
筑紫磐井氏は『頂上の石鼎』はオーソドックスな評伝、『二冊の「鹿火屋」』は石鼎の深層心理を追及しようとする探究書であると述べている。その意味では全く異なる視点を持つものだ。

他に、主宰の「ににんの反芻」、浜田はるみ氏の「十七音の字宙」、高橋寛治氏の「定型詩の不思議」、田中庸介氏の「わたしの茂吉ノート」、正津勉氏の「前田普羅」、木佐梨乃氏の英語版「奥の細道を読む」等、健筆を揮う。

『水明』 2015年7月号

2015年7月4日 土曜日

俳誌望見    筆者・ 池田雅夫

『ににん』春号   通巻58号より

「ににん」は季刊誌である。すなわち春夏秋冬の、年四回発行される。本号・春号は冬から晩春へと移り変わる様が詠まれていて、新鮮な感覚で拝読した。

岩淵喜代子代表が『二冊の「鹿火屋」――原石鼎の憧憬』で、第二九回俳人協会評論賞を受賞された。その書評を三人の方が寄稿している。二冊の「鹿火屋」とは、一般会員に頒布された結社誌「鹿火屋」とは別に、主宰の原石鼎用に編集された昭和十六年十月号と十七年一月号の「鹿火屋」のことである。

石鼎用の「鹿火屋」には、一般会員用に無い句や散文詩などが載せられているという。筑紫磐井氏は、「狂気の論理化」と評し、「石鼎の聞いた神の声を再現しようとしている」と述べ、石鼎の深層心理を追求しようとする探求書であるといっている。これらの書評を読むだけでは全く理解できない。岩淵氏の受賞作品を拝読しなければならない。

さて、「ににん集」(三十八人)の作品を拝読する。今号の兼題は「時計」である.感銘句を五句紹介する。

懐中時計ちらりと見ては懐手     及川 希子
霧笛とは巨大海鼠の腹時計      岡本 恵子
腹時計海鼠クルツと反転す      高橋 寛治
秒針に息合はせ子を待つ夜長     阿部 暁子
春塵を払ひ目覚まし時計捲く     岩淵喜代子

時計草や時計回りなどの言葉の上での時計もあり、発想のおもしろさ、着眼点の多さの認識を新たにした。
「さざん集」(四十二人)の中から感銘句を五句紹介する。

丹沢の一枝をゆらす眼白かな     木津 直人
器量悪き柚子選ばれて冬至の湯    黒田 靖子
雪解の音ちりちりと野に満ちて    武井 伸子
寒梅やふつと溜息したやうな     牧野 洋子
消炭のあつさり燃える夕べかな    山下 添子

多くの作品を拝読することで、知らなかったことや表現の重要性など、たくさんのことを教えていただいた。

正津勉氏が、山岳俳人として知られている前田普羅について述べている。普羅は、大正十三年五月、四十歳のときに、某新聞社富山支局長として赴任した。立山・飛騨に句材を探る山狂いといわれた普羅の山の句と同時に、じつは海の句も素晴らしいと記している。句集「能登蒼し」を繙き、富山赴任に際し、トンネルだらけの中に一瞬見えた親不知の海を初めて目にした。夕暮れの海の蒼さに驚嘆の声をあげたのだと言い、「能登蒼し」と強く心に残ったと断定している。

象徴的な一句を紹介しよう。

春の海や暮れなんとする深緑     前田 普羅

北陸は、裏日本と言われていて、その存在すら認識されていなかった。奇しくも今年、北陸新幹線が金沢まで延伸開業された。五月末に、その北陸新幹線を利用して、水明創刊八十周年と星野主宰就任十周年記念旅行が敢行されたばかりである。北陸での句が楽しみである。

西塔に拠れば東塔あたたかし    岩淵喜代子

2015年6月30日 火曜日

『萌』2015年7月号  名句探訪  筆者 岡葉子

薬師寺の西塔東塔であろう。東塔は創建当時より現存するもので一三〇〇年の歴史をもつ。西塔は昭和五六年の再建であり、そのあぎやかな色彩におどろかされる。しかし、この色が奈良の都の本来のありさまであったろう。とはいえ、やはり長い時をへた東塔に愛着をおぼえる。「あたたかし」の季語が多くをかたっている。『俳句四季』4月号「花辛夷」より

晴天や蝶より重き蝶の影   石淵喜代子

2015年6月15日 月曜日

「ランブル」2015年6月号
◆◆ 現代俳句鑑賞 42 ◆◆
筆者・今野好江

〈蝶〉は〈蛾〉と同じ鱗翅目にはいるが、蛾とちがって昼の間とびあるき夜は休む。
光によつてその物の反対側に出来る部分を影という。
晴天ゆえの影の暗さを〈重い〉としたシュールで感覚的な表現が魅力的である。
同時掲載に

尾がいつかなくなる蝌蚪の騒がしき                  『俳句』四月号 「永き日」より

晴天や蝶より重き蝶の影    岩淵喜代子

2015年6月12日 金曜日

「好日」2015年6月号
現代俳句月評  筆者・越野雄治

よく晴れた春の昼、公園のベンチに座っていると、蝶がひらひらと現れたという景色であろうか。
蝶は冬を除けば一年中見ることの出来る人目につきやすい昆虫だが、この時期、如何にも春の到来を象徴する対象である。そして、もの憂さも春の特徴のひとつ。掲句はそんな雰囲気を伝えている。石畳に映った蝶の影は、まるで作者の心の中の陰翳を表現しているかのようだ。

「俳句」4月号「永き日」より

人はみな闇の底方にお水取り   岩淵喜代子

2015年6月12日 金曜日

「天衣」2015年6月号
現代俳句鑑賞  筆者・吉田正道

東大寺二月堂の修二会。僧侶たちが人々の煩悩による罪を一身に背負い、一日に一汁一菜を命の糧とし、約一ヶ月にわたる懺悔の苦行を断行し、世の中の平和や五穀豊穣を祈願する壮大な行事である。そのクライマックスが「お水取り」(三月十二日の深夜)である。真夜中、松明の先導により僧侶たちの列が二月堂階下の井戸へ降り、ご本尊の十一面観音に供するための香水が汲み取られる。大勢の参詣の人々は闇の中でこの厳粛な儀式をじっと見守っている。

「闇の底方に」との措辞により、闇の底にいるのは人というより、人間の煩悩による罪深き魂が犇めき合っている様を思わせる。「お水取り」が下五に置かれることにより、掬い取られのは犇めいている罪深き魂そのものであるような趣を呈している。
『俳句四季』四月号(花辛夷より)

見えてきし七七年目の椿   岩淵喜代子

2015年6月5日 金曜日

「松の花」2015年6月号  筆者・平田雄公子

「見えてき」たのは、「七七年目」=齢喜寿の目出度い「椿」の花。誰しも椿は幼児から身近に在り、親しい花であろうが、節目にも又格別なのだ。そして紅椿であれば、血脈にも師脈にも通じ尚更であろう。「俳句4月号」発表句より)

探梅のしばらく刃物屋にゐたる   岩淵喜代子

2015年6月5日 金曜日

「麻」2015年5月号より・「俳句月評」 筆者・川島一紀
俳句」四月号「永き日」より                               梅が咲き始めるころ、待ちきれないで早咲きの梅を、あてどもなく山野を探し歩く。寒い中をしばらく歩いていると、刃物屋があった。珍しさもあって、その店へ入った。そこには、刃先が鋭く光る刃物が何本も置かれていた。刃物の青白く冷たい光に一層、寒さが募ってきた。探梅行の寒さと刃物屋の刃物の冷たさが照応。俳句」四月号「永き日」より

「雲」2015年6月号より・「俳句の窓」 筆者・大塚太夫
不思議な句である。改めて「探梅」と「刃物屋」の距離感、質感を考えてみた。そうすると「探梅」の持つ、楽しさの中にある一種の危うさが「刃物屋」にいる時間と極めえて近い、とわかった。なるほどなぁ。

束解いて魞挿す竹となりにけり   岩淵喜代子

2015年5月20日 水曜日

「俳句」四月号より

魞は、湖や沼等の岸辺から葭簀を魚道に立てて、魚を自然に魞壺に誘導して捕える定置漁法である。琵琶湖が有名で、印旛沼や霞ヶ浦にもある。二月上旬から三月中旬頃、魞簀を挿す。掲句は、単なる竹の束が、魞簀の竹になった時の景の拡がりが想像出来て面白い。

「馬酔木」6月号「現代の秀句より」筆者・根岸善雄

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