『暁』 2015年7月号より

受贈俳誌を読む ㊻   筆者・桑田和子

「ににん」(平成二十七年春号)
平成十二年十月、埼玉県朝霞市にて岩淵喜代子により創刊。代表。「同人誌の気概」ということを追及していきたい。通巻五十八号。季刊。
「ににん集・時計」より

春塵を払ひ目覚まし時計捲く 岩淵喜代子
鳥雲に入る裸木のうらおもて
梟が柱時計になつてゐる  川村 研治
亀鳴くやピンクの砂の砂時計 新木孝介
寒すずめ時計回りに啄みぬ 尾崎淳子
花疲れして腕時計外しけり 武井伸子
鳥渡る水の涸れたる水時計 牧野洋子
山眠る庫裏に正午の時計鳴る 宮本郁江

『二冊の鹿火屋=原石鼎の憧憬』岩淵喜代子著。第二十九回俳人協会評論賞受賞記念特集が組まれ、田吉 明・坂口昌弘・筑紫磐井氏等の書評がある。
松朽ち葉かからぬ五百木なかりけり  原 石鼎
神霊こもるここのこの間に風炉の名残
頂上や殊に野菊の吹かれ居リ

岩淵喜代子の評論集『二冊の「鹿火屋」』は原石鼎にとっての神の問題を評論の主たるテーマとしており、論じるのは難しい。岩淵氏には既に『評伝 頂上の石鼎』がある。
筑紫磐井氏は『頂上の石鼎』はオーソドックスな評伝、『二冊の「鹿火屋」』は石鼎の深層心理を追及しようとする探究書であると述べている。その意味では全く異なる視点を持つものだ。

他に、主宰の「ににんの反芻」、浜田はるみ氏の「十七音の字宙」、高橋寛治氏の「定型詩の不思議」、田中庸介氏の「わたしの茂吉ノート」、正津勉氏の「前田普羅」、木佐梨乃氏の英語版「奥の細道を読む」等、健筆を揮う。

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