(七種年男第一句集 『輪中の空』2016年 文学の森)より。
薄原の空間が果てしもなく続いているような気がしてくる。しかも、上五から中七へわたる措辞から、墨絵のような薄原の色合いが読み返す重厚になる。
(七種年男第一句集 『輪中の空』2016年 文学の森)より。
薄原の空間が果てしもなく続いているような気がしてくる。しかも、上五から中七へわたる措辞から、墨絵のような薄原の色合いが読み返す重厚になる。
須藤常央著『虚子と静岡』 2016年 静岡新聞社
茨木和生著『季語を生きる』 2016年 邑書林
津高永理子著『俳句の気持 「ひとり」になれる』 2016年 深夜叢書
創りたい人へ、作りたくない人へ ・NHK学園俳句講座機関誌の20年にわたる好評連載が一冊に。
九鬼あきゑ主催『椎』創刊40周年記念特別号
広渡詩乃著『師の句を訪ねて ー岡本眸その作品と軌跡』 2016年 ウエップ
近藤栄治『俳句のトポス』 2016年 沖積舎
現代俳句評論賞の受賞作家の第一評論集
松永浮堂『落合水尾と観照一気』 2016年 文学の森
神田ひろみ『まぼろしの楸邨 --加藤楸邨研究』 2016年 ウエップ
坂口昌弘『ヴァーサス日本文化精神史ーー日本文学の背景』 2016年 文学の森
『定本 三橋敏雄全句集』 風の花冠文庫18
遠藤若狭男著『人生百景 -松山足羽の世界』 2016年 本阿弥書店
正津勉『乞食路通 -風狂の俳諧師』 2016年 作品社
武田 肇詩集『られぐろ』 2016年 私家版
西池冬扇評論『「非情」の俳句 -俳句表出論における「イメージ」と「意味」2016年ウエップ
磯辺勝『昭和なつかし 食の人物誌』2016年 平凡社新書
小川軽舟著 『俳句と暮らす』 2016年 中央新書
大牧広著 『俳句その地平』 2016年 文学の森
川野蓼草編集 連句『北極星』 2016年 ああの会
松下カロ評論集『女神たち 神馬たち 少女たち』 2016年 深夜叢書
「水筒のからつぽ」というフレーズに「背高泡立草」をぶつけた取り合わせの一句。背高泡立草の明るさが水筒の空っぽの語感を生かし、水筒の空っぽという語感の無心さが、背高泡立草の軽やかな明るい世界を繰り広げている。
「大曾根育代句集『冬至星』 2016年 本阿弥書店」より。
万緑の端ひつぱつて卓布とす
神苑の霧の中より異邦人
着細りの尼僧の急ぐ夏木立
鵺とは虎鶫のこと。古くは怪物とも考えられていたと歳時記にはある。丹念に爪を切っているうちに、夜も深くなり鵺の声を聴いたような気がしてきたのだろうか。
昔から夜に爪を切ってはいけないと言われている。そうした俗説があるために鵺がいかにも怪物めいて、存在感を持つ。
「中原道夫句集『一夜劇』 2016年 ふらんす堂」より。
混みあへば春の光の押しあへる
日脚伸ぶ猫に背骨といふ峠
しらじらと明けて冬菊活けてある
蛇の衣寄つてたかつて欲しがらず
狼は時間の渓聞さかのぼる
鏡台は粗大ごみだったのか、あるいは引越しの途中の屋外に置かれたのかもしれない。どちらにしても非日常の鏡台、そこへ散りかかる萩もいつもの萩ではなくなって、物語めいてくる。
「杉山文子句集『百年のキリム』 2016年 金雀枝舎」より。
百年のキルムや蟻の声聞こゆ
夫に見えぬ夫の背の疵銀木犀
テキサスや月にぶつかる自動車道
留守録に街騒十秒牡丹雪
(せりなずなごひょうはこべら)と新春の若菜を数え、その最後に放射能を据えることで古典的な七草を鮮やかに塗り替えている。
「高野ムツオ第六句集『片翅』 2016年 邑書林」より。この句集も東日本大震災の延長の作品集である。他に以下がある。
溶岩のごとき笑顔も五月かな
口中に螢火飼いしまま老いぬ
戦争や葱いっせいに匂い出す
若布喰い白魚を喰い涙ぐむ
女性でなくても主婦でなくても、飯を炊くという行為に関わらない人は少ない。例え、直接飯を炊くことに関わらなくても、毎朝湯気の立つご飯に出合っている人は、この句の初語に懐かしさを覚えるだろう。
単に飯を炊くという事項以上に、日常の中の折目のような、始まりのような気持ちが湧いてくるのである。そうして、(山の椿の満開に)の活気が飯を炊くことの活気と重ねられて、生命感を湧きたたすのである。
(高浦銘子第三句集 2016年 ふらんす堂『百の蝶』より。他に(押入れの中にも梅の香がとどく)(畳まれて目玉ばかりの鯉幟)(はなびらとおもえば蝶の流れゆ)など。
俳句に関わっているものにとっては、総本山と言えば永平寺が浮かぶ。芭蕉の旅で外せないこの寺を(水のようなる)だとする措辞の他には、永平寺を言い表すことばは見当たらない。この修辞によって、みごとな総本山の全容が浮かび上がる。蝉の声は山形の山寺だが、総本山はひぐらしの声に蔽われていたのだろう。
「山田貴世第三句集『喜神』 2016年 東京四季出版」より。他に(桑の実や好きに歩いて風聴いて)(鹿鳴くや身ほとりの闇蒼みたり)(花八つ手てもと俄かに暗むかな)など。
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