2014年10月11日 のアーカイブ

足裏の火照りてきたる盆踊    岩淵喜代子

2014年10月11日 土曜日

筆者  赤木和代

(ににん夏号より)生活「踊」の傍題「盆踊」の解説に、俳句では単に「踊」というだけで、盆踊を意味する。盆踊は平安初期の空也上人や時宗の一遍上人が広めたと言われる念仏踊を起源とするもので、盆に迎えた霊を供養し、かの世へ送り返すためのものであったという。

今では、娯楽の要素が多い。櫓を中心に二重三重の輪を作って踊っていることが多い。盆踊の曲も新しいものは馴染がないが、昔から踊っている曲は自然と手足が動く。岩淵氏の句、時間の経つのも忘れるほど没頭して踊り続けたのであろう。下駄と足裏の摩擦熱も感じられる句である。(「笹」2014年10月号・現代俳句月評より)

十字架を真綿ぐるみに冬の霧   海野良子

2014年10月11日 土曜日

独特な視点を持った作者の立ち上げる映像は、霧の中の十字架を(真綿ぐるみ)とする。ほかにも、(羽抜鶏墓の建立見てゐたり)(美術館のやうな工場ぼたん雪

)にも感覚のの独特さを感じた。さらに、真綿という語が引き出される背景には信仰も感じられる。句集『時』2014年10月 邑書林より  (筆者・岩淵喜代子)

広げたる指すみずみに秋の風    守屋明俊

2014年10月11日 土曜日

映像として現れるのは空間に浮かんだてのひらだけ。しかも、一つの掌は五指をしっか開き切った生き生きとした手である。それが(広げたる指のすみずみ)なのである。なんと単純な景。しかし、その単純明快さが秋風を気持ちよく感じさせてくれる。ほかに(竹の秋大きな鳥は村を出て  西日家族)(あぢさゐの遠くに見えし安堵かな   西日家族)(鳥籠に鳥の影なき障子かな  蓬生)(歳晩の抱かれて子に見ゆるもの   日暮れ鳥)(滝が鳴る滝の切手を貼るたびに   日暮れ鳥以後)『守屋明俊句集』2014年 教育評論社 (筆者・岩淵喜代子)

春寒のすつかり濡れてゐる立木   かたしま真実

2014年10月11日 土曜日

濡れている一本の立木、それだけを思いやっている句である。さりげないつぶやきのような措辞によって、作者と交歓しているような一樹になった。もはや立木は単なる一樹ではなく聖者の様相を現わしてくる。第一句集『アッシジの丘』 2014年九月 ふらんす堂(岩淵喜代子)

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