鹿の子をしみじみ見たことはないのだが、(脚高く)と言われればその特徴を納得するのである。鹿の子の脚は細くて長いということなのだが、それを「脚高く生れて」とすることで、鹿の子の運命へ重心が移ってゆく。静かに脚を運んでいる鹿の子が神々しくさえ見えてくる。(舟で見る日永の海の人魚かな)(恋猫に天秤棒を投げにけり〉)。1867(慶應3)年生れ。大正期に活躍した「ホトトギス」の俊英で、高浜虚子の「進むべき俳句の道」にも取り上げられた32人の一人である。 林桂氏の編纂で計画から10年の歳月をかけて出版された。(風の花冠文庫『夜雨寒蛩(やうかんきょう)』)