2014年1月4日 のアーカイブ

桑原三郎第七句集『夜夜』 2013年12月  現代俳句コレクション

2014年1月4日 土曜日

死んでから先が永さう冬ざくら
老人を日向に出して梅の花
マッチ棒でつくる三角夜の蝉
河鹿鳴き代はるがはるに夜と昼
密葬のあと座ぶとんと夏の雨
銀木犀野に夕暮れのゆきわたる
曼珠沙華雨の子供を抱き上ぐる
隣国に砲煙あがる大根干し
浦和よりあるいて与野や梅雨鯰

どのページを切り取っても、飄々とした達観の域に達した作家の
顔が浮かびあがり、絶妙な世界を作っていた。

現代俳句文庫ー73『火箱ひろ句集』  2013 年  ふらんす堂

2014年1月4日 土曜日

切ればすぐ流しの上で西瓜食ふ
野遊びの茣蓙にきちんと靴二足
赤まんま茣蓙の四隅に石置きて
落椿踏んで悲鳴のごときもの
水鱧やこんなをとこぢやこころぼそ
満月やベビーベットの中は空
雪解川なかなか海になじまざる

なぜか『船団』の方たちの句は若々しい。それは口語的発想からくるものなのだろうか。

ここはまだこの世ぶらんこ軋むかな

多分、こんな句を見かけなかったら、還暦も過ぎた作家とは思わないだろう。

赤坂恒子句集『トロンブ ・ルイユ』 2013年10月 ふらんす堂

2014年1月4日 土曜日

跋文 坪内稔展

春風に押されてみんな古墳まで
ふららこや物言ふ時は息吸うて
まなうらに降る淡雪の影法師
晩夏光砂におしりの跡ふたつ
末席にゐて入道雲を見てをりぬ
秋色の海よりほろと生まれたの
魚の首ざつくり落とす星月夜
亀鳴くと思へばありし後生かな

一句目の古墳がいい。二句目の自然の中への埋没感。三句めの象徴性。多彩な作家だとおもった。

渡辺松男句集『隕石』  2013年10月  邑書林

2014年1月4日 土曜日

作者は短歌で迢空賞受賞の作家である。
短詩形というのは想念が他人へ形状的に伝えられて完成なのだろう。そのことを、この一集で改めて納得した。
この作家の短歌に(ああ母はとつぜん消えてゆきたれど一生なんて青虫にもある)という中の「青虫にもある」の普遍的な事実によって読み手はさらにこの一首を深く納得することになる。

短歌作家が俳句を作ることに不思議はないが、やはり短歌人ならでは想念がいたるところに顔を出すが、それが映像的になるとき俳句が生まれるのではないかと思う。

牛の尻ぶろぶろとひるがすみかな
苜蓿に眉毛の太き獣医かな
手のとどくはんゐ遥けくかたつむり
松虫草ひとりのあとをひとりゆく
秋冷が汽車のかたちではこばるる
とほりすぐるものこそ秋の糸切歯

そうした中で、最終章近いところにある冬木を詠んだ句群が短歌と俳句とバランスを保った透明な詩心を展開していた。

大勢で死ぬゆめをみる冬木かな
冬木といふまつ赤な芯に出あひけり
遠くから枯木ちかづけば巨人

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