「龍宮」という題名は、亡くなったものへの想いなのだろう。今回の東日本大震災の体験者でなければ詠めない作品集。
双子なら同じ死顔桃の花
ポンポンと死を数えゆく古時計
泥?くや瓦礫を己が光とし
春中の冷蔵庫より黒き汁
卒業す泉下にはいと返事して
いま母は龍宮城の白芙蓉
柿ばかり灯れる村となりにけり
穴と言う穴に人間柘榴の実
酔ひて罵る霜のホームの全員を
朝の虹さうやつてまたゐなくなる
「龍宮」という題名は、亡くなったものへの想いなのだろう。今回の東日本大震災の体験者でなければ詠めない作品集。
双子なら同じ死顔桃の花
ポンポンと死を数えゆく古時計
泥?くや瓦礫を己が光とし
春中の冷蔵庫より黒き汁
卒業す泉下にはいと返事して
いま母は龍宮城の白芙蓉
柿ばかり灯れる村となりにけり
穴と言う穴に人間柘榴の実
酔ひて罵る霜のホームの全員を
朝の虹さうやつてまたゐなくなる
飯田龍太の甲斐、広瀬直人の甲斐を受けつぎながら、その風土を読み継いだ端正な作品集。
雲流れをり栃の芽の濡れてをり
秋冷の寂光院に木の匂ひ
筆圧の一信届く秋の風
古巣抱く大きな欅一周忌
蔵の向うに木犀の花ざかり
カステラの底の薄紙春うれひ
風呂敷に包んで帰る蜃気楼
つばくろや顔に慣れたる朝の水
あるときは妻の昼寝を見てゐたる
ぼんやりと妻子ある身や夏の月
鈴虫が鳴かなくなつて広き部屋
1967年生れ「銀化」所属。奇抜な発想をしているわけでは無い。誰もがもう少しで気がつきそうなところを掬いとって、読み手を惹きつける。
顕微鏡三十倍の蝶の舌
蝶の舌とはかなり微小なもで、顕微鏡で30倍くらいにしなければ存在感もないかもしれない。1999年公開のスペイン映画に「蝶の舌」というのがあった。そこで初めてしったのだが、蝶の舌は、使わない時には、ぜんまいのように巻かれて収まっているらしい。
水買ひに出てたくさんの春の星
ふらここの真正面に海の線
八朔やつまんでみたき壺の耳
みづうみを皮手袋の指でさす
泣いて泣いて泣いて菜の花あふれをり
旅果ての鞄ひらけば花吹雪
水中花パソコン端末機の微熱
一集は柔らかな感性で取りこまれた日常の風景。それがセンチメンタルになる寸前で留まるところに共感を呼ぶ。
幽(かくり)世の母の横顔明け易し
死の床に横瀬の瀧音響かずや
天降り来し天衣をまとふ白牡丹
栗を剥く手力われに残りをり
これ以上紅くなれぬと椿落つ
老い我も祭の渦に巻かれをり
「これはいづれの媼にてあるぞ」初鏡
99歳になっても俳句がつくれるのだろうか、と自分を振り返ってしまう。その年齢の今を力まず、ありのままに切り取っているところが好感となる。
『爽樹』2013年1月号 代表・小山 徳夫
『白雁』鑑賞 片岡啓子
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『繪硝子』2012年12月号 主宰和田順子
鈴木靖史「句集を読む」欄にて、句集『白雁』評
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『向日葵』2012年12月号 主宰伊那淳男
句集『白雁』評
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『吉野』2012年8月号 主宰 野田禎男
句集『白雁』紹介
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『たかんな』2012年10月号 主宰・藤木倶子
俳書紹介 筆者・江渡文子
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『水眀』2012年10月号 主宰・星野光一
句集喝采 筆者 内田恵子
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『四葩』2012年11月号 主宰・村松多美
句集紹介 筆者小野寺 洋
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