浦川聡子第三句集『眠れる木』  2012年12月 深夜叢書 

顕微鏡三十倍の蝶の舌

 蝶の舌とはかなり微小なもで、顕微鏡で30倍くらいにしなければ存在感もないかもしれない。1999年公開のスペイン映画に「蝶の舌」というのがあった。そこで初めてしったのだが、蝶の舌は、使わない時には、ぜんまいのように巻かれて収まっているらしい。

水買ひに出てたくさんの春の星
ふらここの真正面に海の線
八朔やつまんでみたき壺の耳
みづうみを皮手袋の指でさす
泣いて泣いて泣いて菜の花あふれをり
旅果ての鞄ひらけば花吹雪
水中花パソコン端末機の微熱

一集は柔らかな感性で取りこまれた日常の風景。それがセンチメンタルになる寸前で留まるところに共感を呼ぶ。

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