2016年9月27日 のアーカイブ

暁の夢に入り来し深轍   齋藤愼爾

2016年9月27日 火曜日

句集『陸沈』は、すべて作者だけが入れる夢の世界で詠んでいると言ってもいい。
それだからこそ、(たはやすく身一つを移す雁列に)と、わが身を自在に移せるのである。夢の入り口に深々とある轍の跡こそ、齋藤愼爾氏の夢の象徴なのだと思う。
「齋藤愼爾句集『陸沈』 2016年  東京四季出版」より。
他に
雛の間の月の雫は花のごと
春満月面に毛毬撞きし跡
白妙の産衣は朧への橋懸り

麦踏の人入れ替はることもなし   加藤哲也

2016年9月27日 火曜日

長い時間、麦踏の光景を見ていたのだとわかる。
そのことで読み手の中にも麦踏の人の姿が印象付けられていく。永遠にその麦踏は続けられて行くような錯覚さえ覚えてくる。

そういえば句集には、(悲しびはかなしびとして種蒔けり)という句もある。その種が麦踏の麦とも呼応して、静かな光景である。他に(知らぬ間に夢とはぐれし二日かな)(露の玉こころの隅をころがりゆく)など。「加藤哲也句集『美しき尾』 2016年 角川書店」」

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