白い部屋には大きな窓があります
空が見えます 日が差し込み 風が吹き抜けます
雲の変幻 月の満ち欠けに影が過ります
部屋には何もありません
一冊の雑誌が置かれているほかは
雑誌はときどき発行されます
雨あがりの朝 月の夜 あるいは雪の降る午後に
以上の言葉は見返しに書かれた創刊のことば。
古地図をたどる草蜉蝣に蹤き 有住洋子
白百合の倒れむとして地に触れず
箱庭を置きて一軒たそがるる
そうして編集後記のページにはーー毎日何かを選択しながら、何かを失っていくかもしれないが、その積み重ねが人の価値観になるーーという覚悟のようなものが書かれている。どこにも創刊というようなことばはない。まことに淡々としかも怜悧な空気を感じさせる個人誌である。