柿本多映句集『仮生』 2013年  現代俳句協会 

共寝して覗く牡丹のまくらがり
谷蟆の淋しさに蔵ひらきけり
往年は立つたままなり青野原
法華経を知らず蛇のままでゐる
塩壺の塩は減りつつ蝉の穴
このところ芒ヶ原に箱ひとつ
帚木に心音ありと告げにくる
木枯にざらつく姉の身八つ口
もう人に戻らぬ石と芒かな
見も知らぬ昼を歩いて薄氷
傘寿とは輪ゴムが右から左から

ご主人を亡くされたようである。そのことを直裁的に詠んだものはない。間接的にも詠んでいな。柿本多映氏にとって俳句は自身の想念の広場を詠み続けることなのだろう。

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