2012年10月6日 のアーカイブ

『若竹』2012年10月号 主宰・加古宗也

2012年10月6日 土曜日

一句の風景   筆者江川貞代

椎匂ふ椎の闇より闇を見る    岩淵喜代子 「俳壇」六月号より

 椎の花は青臭い強烈な匂いがする。女であれば女を、男であれば男を意識してしまう一種独特な匂いともいえる。
 作者は椎の大木の「闇」の中に立っている。むんむんと花の匂いの重く淀んだ空間は、現実の「闇」である。そこから別次元の「闇」を見る。岩淵氏は「俳句の俳とは、非日常です。日常の中で、もうひとつの日常を作ることです。」と述べられているが、この別次元の「闇」は作者自信が作り出した非日常のものだろう。それは作者の心象風景か、あるいは性の深淵か、それとももっと根元的な人間の罪業のようなものか。作者は瞬きもせず、その「闇」を見据えている。上五の「椎匂ふ」の措辞が、両方の「闇」に照応し、その重層性が句に深い奥行きを与えている。

石井薔子第一句集『夏の谿』 2012年9月  かぷり出版

2012年10月6日 土曜日

初夏の中空にあり蝶の部屋
薔薇の香の一番奥に辿りつけず
暮れぎはの薔薇は花芯の見ゆるまで
枯芝の明るし大き靴を提げ
子の大き足に躓き豆を撒く
本棚に寄り掛かる癖鬼胡桃
どこまでも這ひたがる子を冬草に
アフリカの薔薇唇で触れてみる

「寒雷」に拠ることから俳句を作り始め、現在は「街」と「槌」の同人。幻想とはちがうのだが、幻想かと錯覚しそうな側面を切り取っている句が多い。それが魅力的である。。

真夜中も風巻いてゐるミモザかな

なかでもこの一句は、事実の描写であるにもかかわらず、ミモザの花の本意を極めたのは「真夜中」の一語ではないだろうか。

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