初夏の中空にあり蝶の部屋
薔薇の香の一番奥に辿りつけず
暮れぎはの薔薇は花芯の見ゆるまで
枯芝の明るし大き靴を提げ
子の大き足に躓き豆を撒く
本棚に寄り掛かる癖鬼胡桃
どこまでも這ひたがる子を冬草に
アフリカの薔薇唇で触れてみる
「寒雷」に拠ることから俳句を作り始め、現在は「街」と「槌」の同人。幻想とはちがうのだが、幻想かと錯覚しそうな側面を切り取っている句が多い。それが魅力的である。。
真夜中も風巻いてゐるミモザかな
なかでもこの一句は、事実の描写であるにもかかわらず、ミモザの花の本意を極めたのは「真夜中」の一語ではないだろうか。