2011年10月4日 のアーカイブ

『星雲』主宰・鳥居保和 2011年10月 第16号

2011年10月4日 火曜日

俳誌拝見     中村悌二

 『ににん』平成二十三年夏号。通巻43号。代表=岩淵喜代子。埼玉県朝霞市より発行。季刊、60頁。主張=批評眼を待った自立の作家をめざす。同人誌の気概ということを追求していきた
い。

 「物語を詠む」伊丹竹野子の「石原慎太郎の『太陽の季節』を詠む」(二十四句)より
   
  ヨットの帆上げる男の心意気
  白い肌ひらり海月の傘の上
  太陽の季節遠のく秋の空
 
「ににん集」兼題「独」(各五向、題目付)より

  ジャズピアノ独身貴族といふ日焼け   長嶺 千晶
  透かし見る孤独の蛇の衣かな      浜岡 紀子
  独り酌み独りで崩す冷奴         新木 孝介
  サングラス独りごころを育てをり     岩淵喜代子
  独木橋隔て河鹿の高音かな       宇陀 草子
  独活の香や桂の太き古き家       小塩 正子

 「さざん集」(各五句、題目付)より

  やすやすと揺るるつり橋青嵐       服部さやか
  匂ひ立つ竹の切り口宵祭         浜田はるみ
   一輪の薔薇置く隅の予約席       宮本 郁子
   つくばひに落ちて相寄る椿かな     今井 宗睦
   春霞生き残りたる者に降る        佐々木靖子
   百人の汗一つづつ土嚢積む       四宮 暁子

 岩淵代表の提唱する「同人作家としての気概と自立」をうけての各同人の作品は、そのしっかりした骨格に個性が惨んで佳句揃いである。特に兼題の「独」の捉見方と季語の斡旋に注目、大いに参考になった。編集後記によれば、約八年続いた「物語を詠む」は、次号で一時誌上中止とのこと、新しい企画に期待したい。
 「ににん」は同人誌だけに、実力作家の執筆陣による俳句評論の充実が際立つ。連載四篇=長嶺千晶の「預言者草田男」降る雪や、そして結婚」(八頁)、岩淵代表の「この世にいなかった俳人③原石鼎」(四頁)、田中庸介の「わたしの茂吉ノート言道あかあかと(その二)」(五頁)、正津勉の「歩く人・碧梧桐-隠退から急逝へ」(五頁)=は圧巻で、いずれもその俳人・歌人の作品を中心に、当時の社会的背景をも踏まえながら、その作家の人間像を浮彫にする重厚で造詣深い作品論となっている。
 エッセイ部門も多士済済。東日本大震災と原発事故に関する清水哲男の巻頭言「震災詩歌」(その論旨に賛成)を筆頭に、ミニエッセイ「月下独酌」に代表以下十名が個性豊かに健筆を競い、武井伸子のショートーショート風の一俳句の風景」もなかなか面白い。また、四宮暁子の被災地でのボランティア実体験記「復興の記録」が生々しい。
 「ににん」誌は、コンパクトにして内容が濃く、読み応え十分である。代表を中心に大いに論じ合い、同人誌として更に発展される事を期待する。(文中敬称略)

2011年9月号 『港』主宰・大牧 広

2011年10月4日 火曜日

 現代俳句を読む    野舘 真佐志
             
  サングラス独りごころを育てをり    岩淵喜代子
                「俳句ににん」2011年夏号〈独〉より

 サングラスの起源は明らかではないが、古代ローマの皇帝ネロも円形闘技場の観戦に、エメラルドのレンズを入れたものを使用していたという。本来、サングラスは日差しを防ぐために着用する保護眼鏡であるが、目元が隠れるため人相を隠したり、人に威圧感を与える目的に使用することが多い。揚句は、人相を隠す意味のサングラスの着用であろう。人間はサングラスにより、他人に本人であることがバレなければ、良くも悪くも心に潜在した別人格が顕在化するものである。掲句は、顕在化した別人格が独り歩きする様を詠んだものであろう。人間の心の裏をうまく捉えた作品である。

トップページ

ににんブログメニュー

HTML convert time: 0.187 sec. Powered by WordPress ME