2011年7月 のアーカイブ

中岡毅雄著 『壺中の天地』現代俳句の考証と試論 2011年角川学芸出版

2011年7月13日 水曜日

 この評論集の特徴はさまざまな論者の論の展開がなされていること。それを読んでいると、作者以外の俳人の論を同時に知る面白さも加わる。題名となった『壺中の天地』は虚子の「壺中の天地」という俳話から引いている。一書は虚子の俳論と虚子についての俳論を軸にしている。

そう思って読み進んでいてとても面白かった。ただ、惜しいと思うのは、この内容だけで一書を完結させたほうがよかったのではないだろうか。三分の一くらいは、これまでに書いたさまざまな句集評である。これもまた作者の評論であるにはちがいないあが、やはり焦点は少し拡散してしまう。

『相馬遷子ーー佐久の星』2011年・豈の会刊行

2011年7月13日 水曜日

筆者 筑紫磐井・中西夕紀・原雅子・深谷義紀・中寒蝉の各氏

 相馬遷子という名前は何処で印象を植え付けたかの記憶はないのだが、深く刻み込まれている俳人である。あまり積極的に俳人を探ろうとか知ろうとかいう意志もなく過してきたのに、相馬遷子という印象強く持っているというこは、きっと業績がおおきかったのだろうと思っている。一書の最初に抜粋してある遷子の精選句を見渡すと、たしかに読んだ覚えのある作品群である。

一書『相馬遷子ーー佐久の星』は筑紫磐井・中西夕紀・原雅子・深谷義紀・中寒蝉の各氏が分担した共同研究書である。

第二回東京ポエトリーフェスティバル

2011年7月12日 火曜日

130926864510116317595_tpf_wha_1J   第一回東京ポエトリー・フェスティバルは四年ほど前におこなわれたようである。ひょんなことからその第二回の席で自作を朗読することになった。テーマは「神話へそして彼方へ」である。それにふさわしい(?)句を過去の作品から25句選んだ。すでに英訳も高澤晶子さんが済ませてくれている。

出演者は

詩人=谷川俊太郎・高橋順子・田村雅之・三枝浩樹・部鳥子 ・・細見和之・新井高子・友部正人

歌人= 岡井隆・久々湊 盈子・阿木津 英・内藤明

俳人= 夏石番矢・鎌倉佐弓・堀田季何・中塚唯人・今井聖・岩淵喜代子

以上の各氏のほかに外国からの詩人が20人くらい。

映画「木洩れ日の家で」

2011年7月11日 月曜日

見ようと思い立った時に見ておかないと見ることの出来ないものもある。『初国知所之天皇(はつくにしらすめらみこと)』は34年ぶりの上映、しかも明大前のキッド・アイラック・アート・ホールでしか見られない映画なのである。「日本書記」と「古事記」をテーマに日本全国を旅した記録である。7月3日は行く予定でいたのだが、思わぬことで行けなかった。この映画は同じ場所で2月にも上映したらしいので、また少し経ったら上映するのではないかと期待している。

岩波ホールでの「木漏れ日の家で」もまた人気だったようで、神保町まで出かけながら見ることが出来なかったが、武蔵野館で短期間の上映があってやっと観て来た。森の中の古い洋館は、日本の昔の建築物にあるような木枠に縁どられた硝子窓の張り巡らされた家。町に住んでいる息子夫婦とは疎遠で、孫もあまり寄りつかない。そんな家で飼い犬を相手に日々を送る女性は90歳を越えている。

実際の女優も80歳を越えているポ-ランド生れのダヌタ・シャフラルスカ。顔を確かに老婆であったが、シルエットになるときの女性のスタイルは美しい。特別な事件が起こるわけではない日々でも、静かに人生は動いてゆくものである。映像のすべては森の中の古い屋敷の中の生活なのだが、実生活、すなわち食事作りや食事風景は映さない。思い出と生きる老いた女性の我行く末を見詰め続ける内面をさり気ない表情で写し出している。

町に住んでいる息子夫婦は母と共に暮らそうとは思わないが、隣へ母の住んでいる家を売る交渉に来ていた。それを見てしまった女性は、反対の隣の音楽教師をしている夫婦に寄付を申し出る。公証人を立てて、ピアノの下の床下に隠して置いた宝石を取り出して、家の修理代に差し出す。修理も出来て、一階だけは音楽教室として使い初めて、子供たちのにぎやかな声に顔を和ませていた老女はある日、いつもの椅子の上で、犬を傍らに死んでいた。

ここに登場する犬が、この90歳を越えた女性の唯一の話し相手である。大方はこの犬との会話で物語は進行していた。隣の家に夜こっそりと息子夫婦が来て、女性の家を売る相談をしているのも、犬が見付けて教えてくれたのである。女性は結婚して、息子を育てた家をこのまま残したかったのである。庭には木の枝にかけたブランコが今も揺れている。

子規新報 第2巻32号  

2011年7月9日 土曜日

俳句雑誌評    筆者 三好万美

『ににん』十一年一月一日発行
代表 岩淵喜代子 

 創刊十周年記念号であり、特集は、「物語を詠む」である。
巻末の「ににん十年のあゆみ」によると、この「物語を詠む」の特集は、二〇〇四年から続いている独自の特集のようだ。
十周年を記念しての寄稿には、「『ににん』は俳句にとどまらず、詩や短歌にも広い見識を持っているのが評論やエッセイから伝わる。(中西夕紀)」とある。
『ににん』の年表を見ていると、田中庸介氏の「わたしの茂吉ノート」を読んでみたいと思った。

 いよいよ特集「物語を詠む」である。十周年ということで、岸本尚毅、齋藤愼爾、筑紫磐井、八木忠栄が物語を詠んで俳句を寄稿している。
会員の方々はどんな小説を選んでいるのかと、わくわくして目次を詠む。古事記、木曽義仲物語から乙一まで、選ばれた小説は幅広く、それぞれの書き手の趣味と感性が共鳴し合っている。

「物語を詠む」より
佐藤さとるの『誰も知らない小さな国』を詠む
ポケットからこぼれたやうな菫咲く        荒木孝介

人宰治の『千代女』を詠む
お使ひのタバコを五つ桜草            石井 圭子

向田邦子の『きんぎょの夢』を詠む
父の忌のお経浪々水羊葵
らやぶ台を囲みて正座涼しかり          及川希子

星の王子様』を詠む
水のんでみるくのやうな春の朝
あたたかく夜明けの星となりにけり         川村研治

乙一の『夏と花火と私の死体』を詠む
扇風機がくんと首の折れてゐる           武井仲子

深沢七郎の『桐山節考』を詠む
空っぽの背板の雪を払ひけり            尾崎じゅん木

ににん集・・・「月」より
月光の届かぬ部屋に眠るなり           岩淵喜代子
親指と向き合ふ小指月の笛            望月遥
産み月の髪重かりし養花天            中村善枝
 俳句作品の後に月にちなんだエッセイ(「月下独酌」というタイトルが詩的)があり、『ににん』の俳人たちの日常と感性の源をうかがい知ることができた。

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『ににん』十周年記念号は『俳句研究』夏号にも、取り上げられていますのでお手にとってみてください。岩淵

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