この評論集の特徴はさまざまな論者の論の展開がなされていること。それを読んでいると、作者以外の俳人の論を同時に知る面白さも加わる。題名となった『壺中の天地』は虚子の「壺中の天地」という俳話から引いている。一書は虚子の俳論と虚子についての俳論を軸にしている。
そう思って読み進んでいてとても面白かった。ただ、惜しいと思うのは、この内容だけで一書を完結させたほうがよかったのではないだろうか。三分の一くらいは、これまでに書いたさまざまな句集評である。これもまた作者の評論であるにはちがいないあが、やはり焦点は少し拡散してしまう。