2011年5月25日 のアーカイブ

関根誠子第二句集『浮力』 2011年 文学の森刊

2011年5月25日 水曜日

1947年生れ「寒雷」「炎環」「つうの会」「や」 所属
                        栞・石 寒太  池田澄子

描いているのは日常些事であるが飽きさせない句集である。拾えば切りもなく現われるが、生きている実感を形作っている。

日に三度ご飯いただく梅の花
料峭のおほきなドアに辿り着く
天国を歩く練習尾瀬青原
ときどきは眉も使ひて年用意
赤いさざんかしろいさざんか先生来
鎌倉の白菜の値も見て帰る
太郎を眠らせ産業廃棄物処理場に雪
道は道に出会ひて別れ花の雨
おほいなる花野あらはる棺の中
雲の峰掃除ロボット掃除中

中原道夫第十句集『天鼠』   2011年4月刊 沖積舎

2011年5月25日 水曜日

作者還暦記念。

火を通したるものも冷めたる夜の櫻
蔵六の腹平らなり祭來る
まくなぎの夜はかたまつて寝ぬるかな
方舟を曳いていづくに涼みゆく
ごはごはのいちじくのはのゆうまぐれ
栗蟲の出るに出られぬ事情あり
抱きかかへ屏風を運ぶ湖国かな
初髪の空を率ゐてゆく迅さ
天鼠まで鳴くは嬶ぢやのをらぬ所為
風鈴の一藝つまらなくなりぬ
茶の花や寄つてけと言ふ寄らぬと言ふ

「天鼠」とは蝙蝠のことであることを初めて認識した。そういえば鼠と蝙蝠の顔は似ている。作者はその蝙蝠の説明をしながら、蝙蝠のような位置からこの世を眺めれば、常の世が常ならぬ世に見えてくる、と帯に書き記している。

中でも「抱きかかへ屏風を運ぶ湖国かな」の一句がことに印象に残っている。省略するものはすべて省略した大津絵のような達観の絵画。それがこの一集の隅々にまで行きわたった思想に思える。

『空』36号・主宰柴田佐知子

2011年5月25日 水曜日

俳句展望     高倉和子

花どきの方耳塞ぐ枕かな    岩淵喜代子

                「俳壇」4月号より

横臥しているとき、枕は方耳は塞いでいる。当り前のことであるがなるほどと思う。「花どき」の季感が独特の雰囲気を生み出している。

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