‘受贈著書’ カテゴリーのアーカイブ

啓蟄の空ずぶぬれになりにけり   川村五子

2016年3月12日 土曜日

啓蟄と言う季語は意味としては理解するのだが、映像的に思い浮かべようとするると漠々とした気分のみが浮かび上がる。広辞苑の解説の最後に驚蟄という言葉があった。このほうが具体的にイメージできそうな気がする。

(空ずぶぬれ)ということばに託した啓蟄の日の空気がここには言い留められている。雨は空から降ってくるものなのだが、なぜか雨が空まで濡らしたという措辞に置き換わって伝わってくる。

「句集『逞しき空』2015年 角川書店」には(敗荷や空の一片はがれ落つ)(盃の月の光を飲みほせり)(蝌蚪の紐ぐらりと関東平野かな)(十月桜行きどころなく佇ちつくす)(鳥の恋空逞しくなりにけり)など、空の句が多い。

浜田はるみ第一句集『韻き』 2015年  本阿弥書店

2015年12月13日 日曜日

IMG_20151213_0001   昨日に続いて、浜田はるみさんの第一句集が出来上がりました。まだ出来立てのほやほやで、発送はこれからだと思いますが、気持ちのいい句集だと思います。

日向ぼこ神がとなりに来て座る

風鈴を水平線に吊るしけり

家計簿をひらく銀河の片隅で

大寒や枕に耳の置きどころ

留守番の代り盥の大西瓜

葉書出しそびれてへちまぶら下がる

掛け声は端から端へ稲を刈る

一身に海を集めて海女潜く

それからは百日草の真昼かな

 

山内美代子著『藤が丘から --墨彩画と俳句』

2015年12月12日 土曜日

  山内美代子ブログワンタッチ日傘開きぬ山の駅

躊躇いもなく素早く開くワンタッチ傘は、布の張りつめる音も、ことさら山の駅では響いただろう。ただそれだけの風景であるが、これからドラマが始まりそうな印象的なシーンである。私には、冒頭の句は山内美代子さんそのものに思えるのである。彼女はまるで屈折など持たないかのごとく真正面から物事を見詰め、人に向き合う質なのである。その率直さに好感を持つのは、私ひとりではないだろう。

 初花の混み合ふところうすみどり

もちろん、ワンタッチ日傘とは違う深遠な句も作れる作家である。当時、所属していた「貂」の指導者川崎展宏氏は、良い作品が出来ると自分が作ったかのように喜び騒ぐのだった。この句のときも、投稿されてきた句に興奮していた。自分の鑑賞を作者である山内さんに確かめ、さらにわたしにも電話してきたのである。

山内美代子さんと私は「鹿火屋」に入会したのが同時期で、原先生を囲む吟行の旅も一緒だった。その後、『菜の花は移植できるか』の著書を持つ佐藤和夫氏から「貂」への入会を促されたときも、二人で参加した。そうして、ほぼ四十年ほどの月日を過ごしてきた。

昭和四年生れの彼女は今年八五歳。一度はいまさら本など作っても、と思ったこともあったようだ。私もそれもそうだな、とあえて勧めることもしなかった。ところが五月に鳩居堂で墨彩画の展覧会を開催することを思い立った途端に、本も作りたくなったようだ。行動を起こすと、細胞が活気づいて志向も行動的になるのだろう。その活気が山内美代子さんの魂と繋がって、この一冊に纏まった。 (序のかえて  岩淵喜代子)

武田肇句集『大晩課』 2015年  私家版

2015年12月11日 金曜日

武田肇句集『大晩課』 2015年  私家版
鏡のへりで世界は曲る春夕
十六夜の闇は西瓜の種ひとつ
鉛筆に芯の悲しみ山吹も

藺草慶子『櫻翳』 2015年 ふらんす堂

2015年12月8日 火曜日

水に浮く椿のまはりはじめたる
十人の僧立ち上がる牡丹かな
大寺の日向水とて顔うつす
わが身より狐火の立ちのぼるとは
海鳴にたたみて厚き蒲団かな

行方克己第七句集『素数』 2015年 角川書店

2015年12月8日 火曜日

かなかなのかなかなかなと揺り返す
しろながす鯨のやうに雪残る
愚かなることを愚かに大念仏
素数わが頭上になだれ冬銀河
冬ひばり極みに梯子外されて

星野光二第三句集『弓勢』  2015年  文学の森

2015年12月8日 火曜日

方蔭や海抜ゼロの理髪店
人の名を思い出せずに赤のまま
初午や寅より機嫌よき狐
目覚むれば馬柵を越えゆく霧の音

鎌田俊句集『山羊の角』 2015年  恵曇舎

2015年12月8日 火曜日

冬薔薇のぞけば港ありにけり
流木の匂ひ手にあり寒昴
ばらの雨白い鯨が来るだろう
日だまりをひとつにつなぎ冬の園
抱けば子の熱きはらわた十三夜

長浜勤句集『車座』  2015年 本阿弥書店

2015年12月8日 火曜日

車座の老人月へゆくやうな
狼の夢見し布団干しにけり
紫陽花を剪つて誰かを許しをり
蓮見舟口をひらいて見送りぬ
膝ついて己消したる泉かな

風呂を焚く土筆の袴剥きながら   飯田正幸

2015年11月13日 金曜日

風呂を焚くという生活、土筆の袴を取るという所作、どこかの草庵の暮らしが思われる風景だ。そのことが、ごく自然な表現で言い留められていることで、作者の日常と一枚になった風景として肯えるのである。それは、(月祀るものに弓矢のひとつがひ)(思惟仏の裾より足を出す愁思)(持ち替へて一つの荷物夕薄暑)などにも感じられる。

飯田正幸句集『ひよんの笛』  2015年  本阿弥書店

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