山口昭男句集『讀本』2011年 ふらんす堂

田中裕明に学んで、現在「静かな場所」同人・「秋草」主宰
田中裕明の生前の鑑賞を栞に帯に掲げている。その師系を知ると、なお田中裕明の匂いを濃く感じるやわらかな、詠みぶりである。

  葱坊主あたりがらんとしてゐたり
  葛の花ときに赤子の匂ひする
  ヨットの帆ゆれて武者人形飾る
  もの言はぬことが仲よし豆の花
  夕立の人それぞれに鞄持ち

葱坊主のあたりががらんとしていること、葛の花に赤子の匂いがあること、ヨットの帆がゆれて武者人形を飾ったとなど、いずれもが、作者の独断的な感覚でしかないのに即座に共感させられてしまう。それが、どこからくるのか。一篇が最後まで魅力的である。

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