田中裕明に学んで、現在「静かな場所」同人・「秋草」主宰
田中裕明の生前の鑑賞を栞に帯に掲げている。その師系を知ると、なお田中裕明の匂いを濃く感じるやわらかな、詠みぶりである。
葱坊主あたりがらんとしてゐたり
葛の花ときに赤子の匂ひする
ヨットの帆ゆれて武者人形飾る
もの言はぬことが仲よし豆の花
夕立の人それぞれに鞄持ち
葱坊主のあたりががらんとしていること、葛の花に赤子の匂いがあること、ヨットの帆がゆれて武者人形を飾ったとなど、いずれもが、作者の独断的な感覚でしかないのに即座に共感させられてしまう。それが、どこからくるのか。一篇が最後まで魅力的である。