北川あい沙句集『風鈴』 2011年8月 角川マガジンズ

  朧夜の運河にかかる橋ふたつ
  まつさをな巣箱は夢の中にあり
  レタスから少し離れて雨の降る
  街にゐて街のさくらを見てをりぬ
  端居して遠くの夜を見てゐたる
  うたた寝の夢より覚めて素足かな
  灯台を見てから髪を洗ふ夜
  風鈴の音色はきのふよりはるか
  手に持ちて葡萄は雨の重さかな
  秋風が吹けば聞こゆる海の音
  紅葉してゐる誰も居ない家
  煮凝は日の暮れてゆく街に似て
  極月の川の向うに街のあり

 序文の中で今井杏太郎氏が方丈記の書き出しの部分を引用し、それを甘えととるか無常観ととるかという提示をしている。北川あい沙氏は2000年に今井杏太郎氏の「魚座」から俳句をはじめた。一集にはその今井氏のやわらかなリズム、対象に向かう感性の透明感が満ちている。

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