2012年4月27日 のアーカイブ

河野邦子第三句集『急須』 2012年4月  ふらんす堂

2012年4月27日 金曜日

結社『浮野』の編集に携わってからでも30年と、あとがきにある。その年月の重みが河野氏の俳句の骨法になっている。もう俳句という形もゆるがない。そう思えるのが

ひよどりをあいつと呼んでみたりする
雪渓を母に説明してきたる
朱鷺草のあるはず浮野うかぶはず

「ひよどり」の句の座語の据え方、「雪渓」の叙述の方法、そうして「朱鷺草」の句の把握の間の取り方、すべてに年月の積み重ねを感じる。以下の句にある平常心も見事。改めてその句集名『急須』を想った。

学校のプールに蛇の泳ぎけり
冬帽子役場の門を過ぎて海
白芙蓉この世に未練なきごとく
瀬戸の島買いたきほどの島の数

佐藤郁良第二句集『星の呼吸』  2012年4月 角川書店

2012年4月27日 金曜日

黒板は濃き森の色十二月
冒頭にトンネルを置く旅始
寒稽古空気の皺をのばりけり
すぐ先の未来を手繰る平泳ぎ
蒲団叩く団地に谷間ありにけり
朧夜の汐入川の匂ひかな
春眠の髯を育ててをりにけり
山々に神のあらそふ青嵐
音もなく日暮を運ぶ蟻の列
ゆきずりの真水のやうな藍浴衣
つまらない街閉じ込めよ石鹸玉
花冷の楽屋出てゆく楽屋口

昭和43年生れの佐藤氏は俳句甲子園育ち、ということも含めて初めから俳壇の話題性を攫っていた。そうして第一句集で俳人協会新人賞も受賞。そういう意味では、才能を十二分に認めて貰えた幸運な作家でもある。俳句生活の最初から俳壇の中に居た、という感じがする。佐藤氏の俳句の上手さの一つは比喩、二番目は感覚のよろしさだろう。

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