倉橋氏には水原秋櫻子や虚子、道元の著書が多数あるが、中でも「道元」はライフワークになっている。『幻華』はその倉橋羊村らしい句集名である。
……本句集の対象5年間に、同門の身近な先輩藤田湘子、能村登四郎、有働亨、林翔が亡くなった……。とあるが、『幻華』はそれらの人達を象徴する句集名のような気がする。それが、句集の随所に現れる。
風出でて月光ゆらぐ花辛夷
美しく果てむと炭火瞋るなり
落栗や羅漢刻みて石五百
冬鏡まぐれ光りの長寿眉
木枯しのあとの月明大欅
僧体は又の世とせむ竹酔日
控へ目や昭和一桁白絣
瞑れば道元の冬青空があり