2010年9月25日 のアーカイブ

青山結第一句集『桐の花』・ 2010年9月本阿弥書店刊

2010年9月25日 土曜日

  行列の先を見に行く文化の日
  フルートの緑蔭深きところより
  もう少し生きてください寒椿
  夏炉焚く小さな駅に着きにけり
  おーい雲乗ればゆうらりハンモック
  十六夜のどこへも行けぬ姉を訪ひ
  船長のまつ赤なネクタイ南風吹く
  花柊兄復縁をしたりけり
  梅東風や税務署までの二キロ半
  石庭の鶏頭二本高からず
  あやとりの上手な婿と酒を酌む
  冬銀河圧力鍋の噴きにけり

作者の俳句は生活詠、家族詠が多い。そういう場合の大方が「自分史」的な色合いを濃くすることで「おもくれ」に傾くことが多い。しかし、青山さんはその家族を詠むとき、日常身辺を詠むときの距離間がいつも虚実皮膜の詩の空間へ着地する。

深刻な場面であるにもかかわらず、鮮明な輪郭でさらりと言ってのけることで、暗さを吹き消して俳味をなしている。「あやとり」の句などはまさにその最骨頂といえる。

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