行列の先を見に行く文化の日
フルートの緑蔭深きところより
もう少し生きてください寒椿
夏炉焚く小さな駅に着きにけり
おーい雲乗ればゆうらりハンモック
十六夜のどこへも行けぬ姉を訪ひ
船長のまつ赤なネクタイ南風吹く
花柊兄復縁をしたりけり
梅東風や税務署までの二キロ半
石庭の鶏頭二本高からず
あやとりの上手な婿と酒を酌む
冬銀河圧力鍋の噴きにけり
作者の俳句は生活詠、家族詠が多い。そういう場合の大方が「自分史」的な色合いを濃くすることで「おもくれ」に傾くことが多い。しかし、青山さんはその家族を詠むとき、日常身辺を詠むときの距離間がいつも虚実皮膜の詩の空間へ着地する。
深刻な場面であるにもかかわらず、鮮明な輪郭でさらりと言ってのけることで、暗さを吹き消して俳味をなしている。「あやとり」の句などはまさにその最骨頂といえる。