‘他誌からの転載’ カテゴリーのアーカイブ

貼り交ぜる切手とりどり巣立鳥   岩淵喜代子

2016年9月1日 木曜日

『沖』9月号 主宰・能村研三

現代秀句鑑賞   筆者・東 良子

俳壇 六月号巻頭作品「鳥の恋」より
タイトルの「鳥の恋」10句には、上掲句の他に、極く身近な小鳥が詠われている。(雀らに芝生がいちばん暖かさう〉(子雀に隠れどころもなき芝生〉がある。

雀といえば、最近は数が減ったと言われる。町には田畑が姿を消し、日舎の田圃でも、機械化されて稲架も落穂拾いの光景も見かけなくなってしまった(そんな中で見かける雀は、今や懐かしく嬉しくなる存在である。「貼り交ぜる切手とりどり」とは、手許にある、昔、沢山蒐集した切手のことであろう。

とりどりの美しい切手を沢山貼って送る、ゆうパック等であろうか。「巣立鳥」があたかも、沢山の切手を貼つて貰つて、今まさに大空に向かって、飛び立つ処。そんなメルヘンチツクな、楽 しい景が思われた。作者は本年、第29回俳人協会評論賞を受賞された。

綾取りの橋を手渡す鳥の恋   岩淵喜代子

2016年8月13日 土曜日

『斧』主宰・はりまだいすけ

現代俳句評  筆者・大久保和恵

『俳壇』鳥の恋 より
綾取りも毬突きも見かけなくなった。綾取りよりもスマホのゲーム、毬突きよリサッカーだろうか。男女の差がなくなっていると言える。

それが悪いとは一概には言えないのだが、遊びに情緒がなくなっているのは確かである。 さてこの句、「手渡す」とは何と優しい表現であろうか。

しかし、綾取りとはまさに指で作った糸の橋や川を「手渡す」ことである。この措辞によって嫋やかな空間―女の子達が醸し出す香やとりどりの色彩―が眼前に現れ、囀りの空の下で流れて行く幸せな時を共有している童たちの静かな息遣いが聞こえてくる。

高枝の暗きところが小鳥の巣   岩淵喜代子

2016年8月7日 日曜日

『天為』 8月号  主宰・有馬朗人

現代俳句鑑賞   筆者・丸谷三砂

(「俳壇」ハ月号「鳥の恋」より)
繁殖のための鳥の巣は、地中、樹上、岩棚、木の洞など作る場所にもいくつかのタイプがある。その素材も泥や小石、羽毛や獣毛、枯葉や樹皮など鳥によってさまざまである。

掲句の小鳥の巣は樹上の高いところにある。おそらく木の股などに枯葉や小枝などで作られたものであろう。葉の茂っている季節にはなかなか見定めることが困難なのが鳥の巣である。敵から身を守るためには目立たないように巣作りをするのが鳥の習性でもあろう。

葉陰に見え隠れしてどこか輪郭の定まらない小鳥の巣を「暗きところ」よ表現して成功している。

貼り交ぜる切手とりどり巣立鳥    岩淵喜代子

2016年8月6日 土曜日

俳誌「月の匣」 主宰・水内慶太

詩海展望    筆者・田中喜翔

「俳壇」六月号) 俳人と郵便の係わりは深い。毎日俳句や文章を書いては出し、来たものを受け取り郵便に追い立てられながら仕事をしているのだが郵便物は規格や重量厚さによって料金が決つているので例えば一四〇円の場合は一〇〇円と三十円十円の切手を貼り交ぜることになる。

掲句の場合、意味は異なるが「とり」の語が三回繰り返されとてもリズミカルだ。巣立鳥のように手元を離れてゆくのはきっと佳信であろう。ちなみに鳥の図柄の切手は十円と一部の八十二円。

『紫』八月号   主宰・山崎十生

2016年8月6日 土曜日

俳誌紹介   筆者・久下晴美

◎俳誌「ににん」春号(季刊 通巻六二号)
○代表=岩淵喜代子 編集人=川村研治
○発行所=朝霞市溝沼五‐一下上四
*平成十二年秋、岩淵喜代子が朝霞市で創刊。師系は原裕。「同人誌の気概一ということを追及している。主宰は置かず、季刊誌として四月・七月。十月。一月の年四回発行。投句者全員が同人で、昨年秋に通巻六十号、創刊十五周年を迎えた。同人作品は「ににん集」と「さざん集」から成り、各五句ずつ掲載。巻末綴じ込みのエッセイ集「雁の玉章(かりのたまずさとは十七号となり、六名が執筆。

◇ににん集より(兼題…受信)
松過ぎの岬へ運ぶ受信音          岩淵喜代子
大欅ただ今春を受信中          大豆生田伴子
ふたたびの世に寒北斗受信せよ       武丼 伸子

◇さざん集より
風花や発掘されし柱穴           川村 研治
へうきんな冬雲ふはりひよこ色       高橋 寛治
行列の影が影踏む春隣           服部さやか

*巻頭には山内美代子句画集「藤が丘から」・浜田はるみ句集「韻く」の出版祝賀会と書評を十三頁にわたり載せている。岩淵氏は〈石鼎余滴〉として原石鼎の評伝を四頁執筆。

*余談だが「ににん」のウェブサイトも充実している。〈喜代子の折々〉は代表の日常が綴られており素顔が垣間見えて興味深い。

毎日新聞 7月27日夕刊

2016年7月31日 日曜日

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毎日新聞夕刊

「ににん」夏号 59号

2016年7月30日 土曜日

『遊牧』2016年8月号 主宰・塩野谷仁
俳誌探訪  筆者・伊藤幸

「ににん」夏号 第59号
代表・岩淵喜代子
編集長・川村研治
発行所・埼玉県朝霞市

表紙絵/尾崎淳子    題字/黒田靖子
表紙裏「奥の細道を読む」第三一回「白河の関」英訳版和 訳英訳いずれも分かり易く解説。木佐梨乃氏執筆

俳句史の地平『二冊の「鹿火屋」―原石鼎の憧憬』
著者岩淵喜代子。俳人原石鼎の作品足跡を辿って綴られた書 籍を熱く四頁に亘って解説。水野真由美氏執筆。

「ににん集」正座 四一人名 各五句より。
正座とはなれず蹲裾のひきがえる   佛川 布村

「さざん集」   四三名 各五句(内半夏生より)。
てのひらの雹は芯まで曇りいる    岩淵喜代子

秀句燦燦「ににん反勿」八 河村研治選評 十一句より。
立冬の鏡の奥の時計鳴る       武井 伸子

秀句燦燦「十七音の字宙⑨ 浜田はるみ選評 十句より。
春の水光の底を流れけり       石丸千恵子

石鼎余滴三「鈴木芳如」      山石淵喜代子氏執筆
原石鼎と鈴木芳如との長年の関わりが綴られた随筆。

「雁の玉章」浜岡紀子、武井伸子、栗原良子、岩崎喜代子の四氏・随筆執筆。全体に若さと向上心が漲り発展を願う。

貼り交ぜる切手とりどり巣立鳥   岩淵喜代子

2016年7月30日 土曜日

『くぢら』2016年8月号 主宰・中尾公彦
現代俳句月評  筆者・工藤進

(『俳壇』六月号(鳥の恋)より)
封筒や葉書に色とりどりに貼られた切手は受け取る方も何故か楽しい。四季折々の季節感も香りもあり、差出人からの温もりや遊び心さえ感じる。たかが切手、されど切手なのである。

詩作とはそんな日常の些細な視点や発見から生まれてくるものかもしれない。封筒に貼られた様々な切手はみな一羽づつ、作者から離れた巣立鳥なのかもしれない。

高枝の暗きところが小鳥の巣   岩淵喜代子

2016年7月30日 土曜日

『麻』2016年7月号 主宰・嶋田麻紀
現代俳句月評 筆者・川島一紀

『俳壇』六月号「鳥の恋」より。
大抵、小鳥は、危険なものが近づかないような、安全な場所である樹木の高枝に巣を作る。地上から、巣の構成物である木の枝、枯草、紙、土などを拾い集めて低い擂鉢状の巣を作る。地上から見て、高枝の巣の造作が、暗く見える。

『草林』主宰・雨宮抱星 2016年7月号転載

2016年7月10日 日曜日

俳誌春秋   筆者・竹川みさ子
『ににん』二〇一六年春号 通巻六十二号代表 岩淵喜代子(埼玉県朝霞市より発行)創刊平成十二年秋、岩淵喜代子が朝霞市にて「同人誌の気概」ということを追求していきたい。と標榜。(季刊)   16年俳句年鑑

『ににん』62号はお二人の句集出版祝賀会のグラビアから始まる。浜田はるみ氏の「韻く」と山内美代子氏の「藤が丘から」で、「祝賀会風景」の記録は服部さやか氏。祝賀会参加者の「句集の一句選」より

日向ぼこ神がとなりに来て座る  浜田はるみ
水の揺れ日の揺れ風の金魚売り  山内美代子

当日出席の叶わなかった山内氏の「藤が丘から」には浜岡紀子氏と武井伸子氏の書評。「序にかえて」は岩淵喜代子代表がそれぞれの視点から、著者の明るく才能豊かで、しかもエネルギツシュなお人柄を、すっきりと飾らずに称えておられる。

墨彩画と書、俳句とエッセイが納められたという贅沢な句画集、著者は昭和四年生れという。多才にして多彩なる表現者に感服である。

俳句作品「ににん集」より 兼題「受信」
松過ぎの岬へ運ぶ受信音    岩淵喜代子
受信して朱の冴返る火山弾   川村 研治
探梅や受信感度のよき日向   佐々木靖子
覚め際に受信せる夢冬の薔薇  末永 朱胤
枇杷の花星の言葉を受信せり  鈴木まさゑ

「さぎん集」より
冬の波は海の呼吸と思ひけり   木津 直人
新春の野良着持ち出す日和かな  西方 来人
淡雪の余白に雀こぼれ来て    高橋寛治
硝子戸の向かう木の芽の騒がしく 武井伸子
深々と青空ありぬ出初式     岩淵喜代子

高橋寛治氏「定型詩の不思議」、岩淵代表「石鼎余滴」は克明に調べあげて中身の濃い連載評論である。

「雁の玉章」は六氏のエツセイ集。その中で代表は「『ににん』は誰もが気兼ねなく評論俳句を発表し続け、格闘する場としたい」と「同人誌の気概」が充分感じ取れる俳誌である。

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