道々に草笛になりそうな木の葉、草の葉を見ると吹いてみたくなる。郷愁に誘われ吹いてみると思いがけなく、(火の音色)であった。草笛という季題を身近な生き生きとした命あるものにしている。誰しも人生懐かしいことばかりではない、忘れていた一駒を突かれたような心に深く食い込んでくる作品。
(「枻」五月号・筆者・中村幸子)
道々に草笛になりそうな木の葉、草の葉を見ると吹いてみたくなる。郷愁に誘われ吹いてみると思いがけなく、(火の音色)であった。草笛という季題を身近な生き生きとした命あるものにしている。誰しも人生懐かしいことばかりではない、忘れていた一駒を突かれたような心に深く食い込んでくる作品。
(「枻」五月号・筆者・中村幸子)
俳誌探訪 筆者 高野礼子
『ににん』2014年冬号 第53号
代表・岩淵喜代子
発行・埼玉県朝霞市
目次に続いて、吟行・火と灯の祭
「若草山山焼」と題し。
作品「山談義」12句より
山焼きの山を下りて山談義 伊丹竹野子
作品「冬萌」12句より
冬萌や石に埋もれし石の貝 岩淵喜代子
「ににん集」兼題・広場より
のどかさや猫は広場の哲学者 木佐梨乃
椋鳥鳴きて広場は影の中にある 木津直人
しづり雪鉄の匂ひの広場かな 武井伸子
「さざん集」
無我無我と秋蚕這いゆく音立てて 岩淵喜代子
手囲ひの蛍と歩く橋の上 及川希子
何気なき母の一言水の秋 牧野洋子
一誌の特徴として俳論に重きが置かれて、「乞食路通」「定型詩の不思議」「などがある。俳誌の最後に付録のページ「雁の玉章」があり五名の担当執筆されている。
『天為』2013年10月号
現代俳句鑑賞 筆者・内田恭子
今日もまた清水立口なく盛り上がる 岩淵喜代子
(「俳句四季」八月号)
山中の清水は、岩肌を伝うのではなく水底から湧いているものも多い。透明に湛えられた水をじっと見ていると、水底の砂や小石を巻き上げてそこに水中噴水とでもいうような対流が出来ているのがわかる。ただ、水面を出るほどの勢いではないので、水面がゼリー状に見えるように「盛り上がる」のだ。そんな小さな清水が時に大河のはじまりであったりする。
水はもちろん、句の透明度が高い。
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ランブル2013年10月号
現代俳句鑑賞22 筆者今野好江
梅雨茸つひにひとりがペンで刺す 岩淵喜代子
『俳句』八月号
湿気の多い梅雨どきに生える梅雨茸。食べられるものもあるが殆ど毒きのこである。 樹の下や庭隅などに生える梅雨茸は陰気な感じがする。上田五千石の句に
鉛筆で火蛾の屍除くる貧詩人 五千石
があるが、何か気色の悪いものに出会った時、人は見過すことが出来ない性がある。
陰鬱なてらてらした梅雨茸を見た人が思わずペン先で突いてしまった。 傍観者たる作者の諧謔を弄した一句。
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『氷室』2013年10月号
新・現代俳句鑑賞 筆者・大島幸男
梅雨茸つひにひとりがペンで刺す 岩淵喜代子
「俳句」八月号
吟行会場は、由緒はあるものの、参拝者のほとんどない田舎の神社である。だから裏手に廻れば、手入れのされていない林には、落葉や倒木が雑然として、雨上がりの茸が処々に伸びている。とりわけ巨大な茸を一同取巻き、あれこれと談義をするが、名前もわからない。「 毒かも知れないから触らないで」という声にもめげない一人がペンで突いて倒し、ついには突刺さして高々と持ち上げた。みんなの視線は茸に釘付けなのである。
懐かしいコメディー映画を見るような喧しい様子が楽しい。
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『田』2013年10月号
俳句月評 色色 筆者・栗山政子
天道虫見てゐるうちは飛ばぬなり 岩淵喜代子
「俳句」八月号より
昆虫の多くは、人の近づく気配がしただけで逃げてしまう。
その点、天道虫は人が近くにいても、すぐには飛ばない。トンボのように羽がはっきり見えない天道虫は、どうやって飛ぶのだろうか。 じっと見ている。でも飛ばない。掲出句を読み返すと、天道虫が眼前に現れてくる。飛ぶ瞬間を見てみたくなる。
体の表面に光沢のある天道虫は前翅を割って、下にたたみこまれた薄い後翅を広げて飛ぶのだが、この翅がけっこう長い。
太陽(天道)へ向かって飛んでゆくから、天道虫と呼ばれるそうである。
〈指わつててんたう虫の飛びいづる 高野素十〉
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『松の花』 2013月10月号
現代俳句管見 総合誌より 筆者 平田雄公子
天道虫見てゐるうちは飛ばぬなり 岩淵喜代子
「俳句」8月号
天道虫」は、見掛以上に強かな昆虫かも。見られて「ゐるうちは」不活発なのに、目を離すと逃げるのだ。
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『狩』2013年11月号
秀句探索 筆者森本秀樹
教室のうしろの黒板梅雨長し 岩淵喜代子
「俳句」8月号より。意表をつく作品である。そういえば学生のころ、各教室の後ろに黒板があったのを思い出した。週間予定表などが書かれていたような気がする。朝から梅雨の雨がしとしと降っている。生徒は一斉に「まえ」の黒板を見つめ、先生の講義に聴き入っている。時折視野に入るのは、長梅雨の窓の外と、廊下の前の出入口くらいではなかろうか。
掲句は、まったく視野に入らない「うしろの黒板」に注目。長梅雨が外のみならず、教室全体にまで影響を及ぼしていることを示唆している。
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『雲取』2013年11月号
現代俳句管見 下條杜志子
真ん中に火鉢置かるる花疲れ 岩淵喜代子
(「ににん」夏号)
暮らしの、部屋の、調度の主のような火鉢であったが、役目を終えて消えつつある。炭火や練炭、炭団も同様だろうか。この句、上五から察するにお連れがありそうな。そして下五からは花冷えか花の雨の中を少々お疲れ気味に来られたと思われる。火鉢の火がそれらを全部集約してほのぼのと赤く、花を愛でた疲れに、僅かな火の色の呼応が美しい。
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『森』2013年10月号
俳句への思い四 筆者・五十嵐修
火の中に火の芯見ゆる桜の夜 岩淵喜代子
『ににん』夏号
この桜の夜の火は何であろう。その詮索はさておき、生きている大の力や匂い、それに重ささえ感じさせ、胸奥に導き、句は独特のリアリティを備える。
この火はまた過度の文明化によって起こった戦争などの争いや原発事故などと潜在的なところで地続きなのでは。
探し当てた火の中に見える芯とは過剰な表現かなとも思えるが、日本人の鋭敏な直感にも適って時代と社会の陰影を増幅しているのが伝わり、忘れることなく歴史にも目を向けよと訴えている。読めば読むほどそう思えてくる。
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『春野』 20113年10月号現代俳句鑑賞 --五感を通して
椎匂ふ闇の中より闇を見る 岩淵喜代子
(俳句四季 8月号より)
神社・寺院には樹齢四、五百年と言われる椎の木があるのは珍しくはない。淡黄色の小花をびっしりとつけ噎せかえるような香を放つ。一句の中に闇と言う辞句をくり返した音調が印象的である。最初の闇は眼前の闇、あとの闇は無窮であると思えば、この世と、かの世をつないでいるのは椎の香りであろうか。
草も木もしんと呼吸を止めているような大気の澄みに椎の花はほろほろと散る。
「窓」俳書を読む 筆者 田沼和美
岩淵喜代子句集『白雁』
岩淵喜代子さんは一九三六年東京生まれ。一九七六年「鹿火屋」入会、原裕に師事。後に川崎展宏主宰の「詔」創刊に参加。二〇〇〇年同人誌「ににん」創刊。
或る蟻は金欄緞子曳きゆけり
金欄緞子という言葉は「金欄緞子の帯しめながら」という歌詞でしか聞いたことがなかった。「キンラン」「ドンス」という響きからしてもう素晴らしく豪華そうだ。
蟻が運ぶのは昆虫の残骸。ところが、その中の一匹が「金欄緞子」を運んでいる。揚羽蝶や玉虫のような、きらびやかな残骸。残酷な美しさだ。
地中には蟻の楼閣障子貼る
蟻の句をもう一つ。地中にはきっと見事な蟻の巣があって、それを「楼閣」と表現しているところがツボ。蟻も冬の備えをして楼閣を万全に整えているのだ、と想像する。
独りづつ雛に顔を見せにけり
楽しくてちょっと不気味。客が一人一人雛人形に近づいては顔を眺めるのだが、それはまるで人形に顔を見せているかのよう。人形と人間が顔をつき合わせる。人形だと思うからぶしつけに顔を見つめるが、逆に人形にも見られている、と思うと楽しい句が不気味な句に思えてくる。
花冷えや裏返しても魚の顔
これも面白不気味な感じを受けた。哺乳類は正面に顔があって、裏返せば後頭部だ。しかし、魚は裏返したらまた顔があるのだ。たしかにそう。魚は横顔しかないから。
月光の仔猫は凪め尽されてをり
親猫が仔猫をすみずみまで砥めてきれいにする。親が面倒を見ているくらいの幼く可憐な仔猫だ。月光を浴びてますます可憐。ところで、猫に月が似合うことといったら。
『総合誌年鑑』の一句 鑑賞・加藤信子
穀象にある日母船のやうな影 岩淵喜代子
映画「未知との遭遇」でUFOの母船が頭上に姿を現し、人々が恐れ慄く場面で、私は子供の頃の体験をおもいだしていた。「ホリ」と呼ばれる縠象虫を取り除くには、真っ白な紙の上に広げて干すのが一番手っ取りばやいのだ。黒い小虫が、私の頭の影を恐れるように四方八方に逃げ出す。黒い地面に身を隠そうとする本能に過ぎないのだろうが、映画の中の人類が縠象虫と重なる。こんな体験を共有している人がいると思うのは私の一人よがりだろうか。
他誌拝見 筆者・井原愛子
「ににん」 秋号 48号 季刊
代表、岩淵喜代子。平成十二年九月埼玉で創刊。
俳論をもつ俳人として、お互が切磋琢磨して行く場に。岩淵喜代子、句集「白雁」。安西篤氏の文によれば、グローバルな視野を持つ方といえるとある。
サングラス独りごころを育てをり 岩淵喜代子
化けるなら泰山木の花の中
花鳥風詠客観写生の作家ではないと見うける。作者の心象に映るイメージを言葉に置き替え、表現力の高さが惨み出ている。
ににん集、「火、灯」より
一族の落ち合ふくば地盆提灯 浜田はるみ
声だけを頼りに歩く螢狩 牧野 洋子
山の端に闇せまりくる地蔵盆 宮本 郁江
甘き水持たぬ輩と蛍狩 山城 秀之
飛蚊症御霊祭りの提灯無数 山内かぐや
物語を詠む、ミニェッセイ、連載評論と、個性が豊かで読みごたえある誌となっている。奥の深い俳句が並び、ににんの方々の研鐙が窺える。
▼現代俳句鑑賞▲ 筆者 原尚子
人が人へ闇を作りて螢待つ 岩淵喜代子
(俳句九月号「半夏生」より)
闇に螢の飛んでいる、非常に美しくロマンチックで幻想的な情景であるが、この句はそんな様子ではない。私は考えて考えて、何となく作者の内面的な深い思考へたどりついたような気がする。人が人へと作る闇とは、人が人をいためたり、傷つけて作られてしまうことだと思う。人によって作られた闇が、かぼそい螢の光によって救われるというか、光明として人にやさしさを与える。それは傷つけた側にも、傷つけられた側にも同じことである。少し淋しいが人間と人間の関係の微妙な存在が感じられる。
作者岩淵喜代子氏は第五句集『自雁』を上梓された。句集中の自選句に
狼の闇の見えくる書庫の冷え
十二使徒のあとに加はれ葱坊主
などがあり、言葉選びが感覚的で、知的な方だと想像できた。「半夏生」の十二句もていねいに的確に書かれた句が並んでおり、その姿勢に敬意を表したいと思った。
俳句の秀峰 筆者 藤井みち子
ガラス吹くたびに聳える夏木立 岩淵喜代子 「俳句」9月号
そんなことはあり得ないでしょうと思いつつも、心惹かれて放すことのできない句である。ガラス玉がしなやかに、かつぐいぐいと膨らんでいくとき、夏木立もまた目に見えて伸びていくと言う。
ガラス吹くーー簡単そうに見えていても息の吹き加減はプロにとっても神経を使うところ、いわば、一連の作業のハイライトに違いない。明るい作業場の窓越しに見える緑の夏木立と、熱を扱う工房内の閉ざされた空気。ここは両者の間に呼応を感じている作者がいる。敢て(聳える)とまで言ったことで、読み手には夏木立の丈高い爽やかさが印象に残る。
他誌拝見 伊東 亮
「ににん」夏号(通巻第四十七号)
平成十二年秋、埼玉県朝霞市で岩淵喜代子代表が創刊。「批評眼を待った自立の作家をめざす」がモットー。画一化する傾向の強い結社俳句の世界でこのモットーは注目に値し、岩淵代表の意欲に敬服する。そのモットーは俳句集の中にも現れ、代表の句も同数、しかも同列、順位もつけていない。また代表ご自身が「同人誌」といわれているように、この句誌は他の句誌と違い特色があるので目次にそって紹介してみよう。
○巻頭言「父のこと すこし」 清水 哲男
最近亡くなられた元軍人のご尊父の思い出をエッセイ風に。こわかった父の思い出も伝わってくる。
O「物語を読む」三人の同人が、それぞれの異なる小説を題材に各三四句ずつ詠む。面白い企画(やってみたい)だが、紙面の都合で各人一句ずつ紹介
高橋治著『風の盆恋歌』を詠む 宮本 郁江
左手に指輪の光るおわら盆
三島由紀夫著『金閣寺』 及川 希子
血の匂ふ密会ありて寒々と
宮本あや子著『花宵道中』 伊丹竹野子
吉原に不審火多き年の暮
○ににん集・・・火・灯(課題句各五句)
日蝕の始まる前の夏椎 岩淵喜代子
手をつなぐ子がひとり居て門火焚く
火取虫つめたく空を落ちて来し 浜岡 紀子
誘蛾灯くちびる薄き人擢ひ 浜田はるみ
火取虫庚申の夜はゆるゆると 高橋 寛治
○さざん集・・・ (雑詠 各人五句)
頭痛など無きがごとくに海月浮く 岩淵喜代子
雷鳴の立方体に囲まるる 同前悠久子
御恩忌果っ金輪際の正座解き 西田もとっぐ
「ににん集」「さざん集」とも細やかな観察眼と表出の明るさに好感がもてる。
○ミニェッセイ「火と灯の祀り」小塩正子他八名
○連載評論
上島鬼貫「独りごと」から 伊丹竹野子
わたしの茂吉ノート二十五 家康と秀吉(その二) 田中 庸介
縁辺の人更衣着信(一丸二〇~二〇〇四) 正津 勉
この世にいなかった俳人⑥ 郷土信仰 岩淵喜代子
それぞれ硬質で質の高い評論である。
『爽樹』2013年1月号 代表・小山 徳夫
『白雁』鑑賞 片岡啓子
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『繪硝子』2012年12月号 主宰和田順子
鈴木靖史「句集を読む」欄にて、句集『白雁』評
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『向日葵』2012年12月号 主宰伊那淳男
句集『白雁』評
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『吉野』2012年8月号 主宰 野田禎男
句集『白雁』紹介
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『たかんな』2012年10月号 主宰・藤木倶子
俳書紹介 筆者・江渡文子
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『水眀』2012年10月号 主宰・星野光一
句集喝采 筆者 内田恵子
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『四葩』2012年11月号 主宰・村松多美
句集紹介 筆者小野寺 洋
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