虫売の祖国も売つてしまいけり   瀬戸正洋

虫売りから祖国へ続くところで、この祖国の存在、在り様が見えてくる。祖国は作者の故郷と同義なのではないかと思う。

目の前で売られている虫も同時に祖国を失ったかのように思えて、その声が哀れになる。極めて卑近な風景を詠んでいる句集のなかで、突然目の前に大海、あるいは高原といった視界のひろがりを感じる一句だった。

ほかに、「優曇華や朝昼晩と飯を食ひ」「雑炊に醤油垂らすや午前二時」など。「瀬戸正洋句集『へらへらと生まれ胃薬風邪薬』2016年 邑書林」より。

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