かたはらに水の光れる猫柳   伊藤敬子

猫柳は銀白色の毛の目立つ花穂、ことに春先には河辺などで目を惹く植物である。「ネコヤナギ」と呼ばれる和名は、その花穂がネコの尾のようでもあるからだろう。確かに動物の毛並みを感じさせる感触である。

だがここでは、傍らを流れる水のひかりに焦点を当てながら、猫柳の花穂のひかりを重ねて、春のもっとも春らしい息吹を言い表している。

(伊藤敬子第十六句集『初富士』2016年  角川書店より)。この句集の装丁も素晴らしい。白の表紙に金文字の句集名。帯も純白、見返しが萌黄色。なぜか白無垢の花嫁衣裳のようである。

ほかに、(福笹を担げる人に蹤きゆけり)(秋草の吹かるる原を振り返る)(天平の色の玉虫掌に貰ふ)など、どの一句も俳句の王道をゆく句群が並ぶ。

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