たうたうと葡萄の中の瀬音かな  林 桂

私の中での林桂という作家は多行形式の作家としてまずインプットされている。分かち書きにすること自体に主張がこめられているから、どちらかと言えば前衛的な世界にいる人という感じでいた。曖昧なまま俳句に関わっている私には、強面の作家という印象だった。

ところが、頂いた句集は『ことのはひらひら』と、いう古典的に思える題名で、中身も一行形式の俳句なのでオヤと思った。こうした句と多行形式の句とが同時進行してきたのかもしれない。ふと高柳重心を思い出した。

掲出句は一粒の葡萄から想像する世界を繰り広げている。はちきれそうな葡萄の一房、いや一粒の葡萄の中に瀬音を感じる、という想像力が、ふたたび葡萄のかたちに戻っていく。林桂句集『ことのはひらひら』 2015年 ふらんす堂

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