聖書から吹き飛ばされし夜の蟻   西池冬扇

聖書にはーー怠け者よ、蟻のところに行って見よ。その道を見て知恵を得よ。ーーという箇所がある。作者もこの話を下敷きにしているだろう。だが、作者の目の前にいるのは、家の中を単独でさまよっている蟻であろう。夜の屋外などでは蟻は目に入ってこないからである。ただただ一匹の蟻を見つけただけなのに、(聖書から)の一語によって果てしない荒野にも思える空間が生まれた。

こうした思惟的な句の他に(冬に入る石を転がす象の鼻)のような作為のない句まで、幅の広い作風が詰まっている。西池冬扇第四句集『碇星』2015年 ウエップ

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